メルマガvol.122「デジタル性暴力に対抗するための力 - 国際連携から見えてきたもの」

最終更新: 2022年4月12日

 デジタル性暴力には国境がありません。

 スマートフォンやインターネットのデジタル技術の発展にともなって、性的画像を記録する制作・流通・消費の境界は曖昧になり、誰でも、どこでも作ることができる、拡散できる、見ることができるようになりました。

 
 
 特に、オンライン上に拡散されている性的画像はすべての削除は大変難しいものです。このようなことから、今日のデジタル性暴力は一つの国、一つの地域だけの問題ではないのです。

 
 
 デジタル性暴力に対抗するためには、国際連携が不可欠となります。

 これまでぱっぷすでは国際的な連携、特に東アジアの韓国や中国・香港・台湾の団体と連携し、デジタル性暴力の問題に、ともに取り組んできました。

 たとえば、連携団体とミーティングを重ね、最新の情報・経験を交流しています。それ以外には、以下のことを行いました。

 2021年、韓国のKCSVRC(Korea Cyber Sexual Violence Response Center、 韓国サイバー性暴力対応センター)とリベンジポルノの相談案件を刑事事件化しました。

 2022年、香港のACSVAW(Association Concerning Sexual Violence Against Women、女性への性暴力に関心を持つ会)と、違法ポルノサイトの摘発に取り組みました。

 こういった国際連携で見えてきた課題は、日本と異なる国で運用されているデジタル性暴力関連の法律の制定・改正、公的機関に連携することです。

 たとえば、韓国では2017年にデジタル性暴力問題に対応するために、デジタル性犯罪被害防止総合対策を制定しました。その後、2020年初期の「N番部屋」犯罪などの新しい形態の犯罪に対応するために、制定をしたデジタル性犯罪被害防止総合対策を強化すると同時に、「N番部屋防止法」(2020年4月)などのオンライン上の性搾取を根絶するための法律の改正を行いました。

 また、2021年9月から改正された「児童・青少年性保護に関する法律」が実施され、児童・青少年を対象にするオンライン・グルーミングは処罰の対象になりました。

 香港では、2021年11月からデジタル性暴力関連の法律-「2021年刑事罪(改定)条例」(Crimes (Amendment) Ordinance 2021)が実施されました。同法律の実施によって同意がないもとでの撮影・流布・脅しなどのデジタル性暴力は刑罰の対象になりました。

 こういった法律の取り組み以外では、中国の動きが注目されています。政府が、性的画像記録の削除に直接関わっている、あるいは協力しています。「網信弁」(中国国家インターネット情報弁公室)はインターネット上の情報を管理する部門です。同部門は、違法・不良情報通報サイトを運営していますが、その中にポルノ・わいせつ物、肖像権違反などに関連した通報項目もあります。

 2020年に中国のネット管理関連部門で受付けた通報件数は、1.6億件(「網信弁」への通報件数は228.8万件)ですが、そのうちポルノやわいせつ物に関する通報は61.7%※ を占めています。※「網信弁」(中国)https://www.12377.cn/ より

 キリスト教系の国際NGO団体ECPAT(The International Campaign to End Child Prostitution in Asian Tourism)に属している台湾エクパットは、通報ホットライン―「Web547」を立ち上げ、通報を受け付ける以外に、警察と協力してフィルタリングも行っています。

 同じく、韓国女性人権振興院(韓国の女性家族部の所属)に属している、韓国デジタル性犯罪被害者支援センターでは相談支援・削除支援と調査・法律・医療・心理カウンセリング案内の支援を行っています。

 各国との交流で見えてきたことは、日本はポルノの生産国、輸出国であり、また消費国であるという現実です。

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