メルマガVol,135「歌舞伎町で"案件"をしていた頃の私へ」

最終更新: 1月28日

みなさん、こんにちは!PAPSの新しいスタッフになった きゅーりちゃんです。今回は私が1年間を過ごした歌舞伎町と現在の私の想いについて話したいと思います。

初めて歌舞伎町に足を踏み入れたのは16歳の春。親の離婚によって貧しくなった。お金がないことがみじめに思った、私の生活費や学費が家族の負担になっていると感じたこと。そして、寂しかった。友達が欲しかった。夜がつらいから、夜の街の歌舞伎町に逃げ出した。

ここからは私が居た歌舞伎町という街の見え方を伝えていきたい。

煙草を片手に、お酒を飲む君たちが輝いて見えた。私と同じくらいの年齢なのに、常識なんてまっぴら無視して、苦しいことから逃げるように笑ってる。そんなハチャメチャなところに私も混ざりたいと思った。「ここで過ごすのに、みんな、お金はどうしているの?」気になった。「案件だよ案件」みんなが口をそろえていった。その稼ぎ方に私は驚いた。でも、それさえすればずっと君たちと、現実から目を背けていられる。

あの春、私は案件(性を売ること)を始めた。案件が集まる場所では、通り過ぎる男たちは何やら品物を見定めるように、頭からつま先に視線を落としてじろじろと見つめる。最初は気持ちが悪かった。女を人形だと思っているあいつらは「猿のような人間」と思った。なのに、体を売るしかないのが悔しかった。
 

 
案件が終わった後、みんながよく「頑張った」とほめてくれた。嬉しかった。そうだ、みんなといられるし、案件やってるのは私だけじゃないんじゃん!私みたいなゴミは、こういう生き方しか許されないって思ってたし、それを繰り返すうちに何も感じなくなった。

財布には数十万の金、片手には煙草、夜は酒におぼれる私。初めて歌舞伎町に来た日に見た「輝いて見える君たち」に気が付くとなっていた。悔しかった感情は消え去って、男からの視線は「金が入る合図」に感じるように、自分が変わってしまった。気が付くと秋が過ぎ、冬を越え、春が近づいていた。この街で1年が過ぎた。

歌舞伎町という町に沼ってしまいそうな自分と、それに違和感を感じ始めている自分がいた。いくつかの新しい出会いがあって私に変化がおきた。私が自分の力で沼から出ようとするのを、ずっと待っていてくれた人たちがいることに気がついた。あと、彼氏ができた!「案件はやめてほしい」と言われた。けど、案件をやめたらお金がなくなる。「金がなくても愛はもらえますか。幸せになれますか」泣きながら言う私に「もちろん」と頷いてくれた。彼氏を信じたい。やっと私は案件をやめた。歌舞伎町からも去った。

私の話はここで終わらない。やっぱり急に金がないと焦るし、イライラする。体を売れば簡単に金が稼げるし、そっちのほうが楽だと思うこともあった。でも、飲食店で昼の仕事をするうちに、「普通に仕事をして、たまに贅沢をして、笑って過ごせる“普通の幸せ”が私が一番欲しかったのに、ずっと、そのことに気が付かないふりをしていた」と気が付いた。だから、昼の仕事を頑張った。そのことを家族に伝えたら、泣いて喜んでくれた。うれしかった。体を売らないことが当たり前になった。周りのひとの愛を素直に受け取って、甘えるってことができるようになった。
 

 
「うちの活動を手伝ってみない?」とPAPSのスタッフに声をかけられて、久しぶりに私は歌舞伎町に足を運んだ。かつて私が案件をやった場所も歩いた。じろじろ見つめる男たちの姿がいまもそこにある。

気持ち悪い。

女の体を買いに来た男からの視線を感じる。あいつらから声をかけられる事への不快感はとてつもなかった。なぜ、あの頃の私はこんな奴らに体を売ったのか。嫌悪感がわきおこる。私はなぜ何も感じず当たり前のように案件をやって過ごしていたのか。過去の自分を否定はしたくないけど、それは違うと今は思う。あの頃、私のことを人形のように扱って、だまして、冷やかして、噓をついた男たちを許さない。案件をして生きている私の友達たちに男がしてきたことも許せない。今も女性たちに同じことをしているであろう「あなた」を私は許さない。

あの頃の自分へ。なにか違和感をキャッチしたとき、自分のなかでなにかが腑に落ちないとき、その「なにか」を大切にしてほしい。その答えがわかることは、これからの自分の生き方や生活に変化をもたらしてくれるかもしれない。そのことを今の私は伝えておきたい。違和感の正体を考えることをどうかやめないでほしい。「この生き方しかない」と決めつける必要はない。私はその生き方の選択肢を広げる方法を考えながら、PAPSでの仕事を頑張ってみようと思う。(つづく)
 

 
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