블룸버그 사 문제
2017 年 10 月 17 日
ポルノ被害と性暴力を考える会(PAPS)
代表・田口道子
ブルームバーグ在日代表・石橋邦裕様
貴社の報道姿勢に抗議し、事実関係の調査・公表、日本語版記事の削除、およびオリジナル記事の正確な翻訳記事の配信を求めます
1.抗議・要請の趣旨
私たち「ポルノ被害と性暴力を考える会」は、ポルノグラフィの制作・流通等を通じて、あるいはポルノグラフィの影響を受けて生じているさまざまな人権侵害や性暴力の問題について調査し、社会に訴えることを目的として活動している団体です。2012 年に、アダルトビデオ(AV)制作に意に反して巻き込まれた方から、私たちに初めて相談が寄せられ、2014 年からは引きも切らず同様の被害相談が届くようになりました(2017 年 8 月 31 日現在の累計約 300 件)。現在私たちは、AV への出演強制被害の相談と被害者の支援を専門的に行なう日本の数少ない団体の一つとして活動しています。
私たちは、2017 年 8 月 24 日配信の貴社の記事、「アダルト業界の大物が 9 位の資産家に──DMM 亀山会長の飽くなき起業精神」を読んで大変驚きました。記事は、AV の配信・販売業で成長した DMM とその創業者・亀山敬司氏を礼賛する内容ですが、私たちは、DMM・亀山氏の商業活動の背後でどれだけ多くの女性(数は少ないけれども男性)たちが悲鳴を上げているかを、被害相談を通じて知っているからです。さらに驚いたのは、日本語版記事の前日に配信されていた英語版記事“Billionaire Porn King Reinvents Himself as Japan’s Startup Guru”を読んだときです。英語版記事には、アダルト産業で財を成した亀山氏が社会的意識の高い起業家として扱われる風潮への疑問 と皮肉が込められており、それは日本語版記事のように亀山氏を無批判に礼賛するもので はなかったからです。
ところが、内容の明らかな相違にもかかわらず、両記事は、署名記者がいずれも「Pavel Alpeyev」と明記されており、あたかも「同一の記事」であるかのようにして配信されています。しかしながら、日本語版記事は、英語版オリジナル記事の主旨に、一読して明白な程度まで変更を加えています。さらに日本語版記事は、変更した主旨に合うように、オリジナル記事に含まれていない情報を付け加えたり、主旨に合わない内容を削除・改変したりすることによって成り立っています。それゆえ両記事は、とうてい同一の記事とは言い難いものです。
署名入りの記事に、その同一性を損なうほどまでに編集・改変を加えながら、その事実を読者に伝えることなく、あたかも同一記事であるかのように配信することは、何より読者に事実を正確に伝えるという報道機関の使命に反しており、通信社としての貴社の基本姿勢が問われる問題であると考えます。ついては、貴社の報道姿勢に抗議し、それとともに、オリジナル記事の同一性を損なう日本語版記事が作成・配信された経緯の事実関係を調査して公表し、日本語版記事を削除し、英語版オリジナル記事を正確に翻訳した記事を配信するよう求めます。
以下、貴社日本語版記事と英語版オリジナル記事とが同一記事とは言い難い理由を詳述しますが、それらはすべて一読して明らかな事柄であり、本来詳細な説明を要しない類のものです。しかしながら、私たちの抗議・要請が単なる印象に基づくものではないことを示すために、あえて詳述するしだいです。貴社が、私たちの抗議と要請に真摯に応え、新進の通信社としての矜持を示されることを期待します。
2.理由
貴社日本語版記事と英語版オリジナル記事とが同一記事とは言い難い最大の理由は、すでに述べたように、日本語記事が英語版オリジナル記事の主旨に一読して明白な程度まで変更を加えていることです。
(1)オリジナル記事の主旨
英語版オリジナル記事の主旨は、「ポルノ」の制作と販売で財を成した人物が、日本の著名大学の学生から「社会意識の高い起業家精神」について講演を依頼されたという驚くべき事実(「ニュース」性のある事実)を社会に伝え、その出来事の背景を、ポルノ産業の変遷に関する情報を交えながら、当該人物(亀山氏)へのインタビューから得た情報を基にして記者なりに構成し読者に伝える、というものです。
オリジナル記事は、当該出来事に対する記者の批判的視点──少なくとも皮肉──を隠そうとしていません。それはすでに記事のタイトル、「億万長者のポルノ王が日本の起業家のリーダーに自己変革」にも表れていますが、本文においてはより明白です。記事の冒頭段落は次の文章で始まっています。
「ポルノハブ・ドットコムの創始者が、ハーバード大学の学部学生に対して社会的責任を負うビジネスを営む美徳について講演を依頼される、ということを想像してみてほしい。それが去る 12 月、日本で起きた。日本のトップレベルの私立大学が、アダルト産業の大物を招待したからだ」(引用①)
そして、記事は、当該大学での講演における学生と亀山氏との質疑応答で結ばれていますが、それは、「社会に貢献しつつ存続しうるビジネスを築く方法」や亀山氏の「経営理念」を聞く学生に対して、肩透かしを食わせるような亀山氏の回答を紹介するものです。
「(社会に貢献しつつ存続しうるビジネスを築く方法に対する)亀山氏の回答はこうだ。一握りの人びとが家族を養えるような会社をつくることから始めなさい。世界的規模 の飢餓と闘おうとするのではなくて」。「亀山氏は、経営理念を説明するよう問われて、 気の利いたフレーズを思いつこうと格闘してから次の返答に落ち着いた。『「昨日の自分より、今日の自分のほうがちょっとだけましになった」と思えるようになりたい』と」
このように、英語版オリジナル記事からは、アダルト産業で財を成した人物が有為な若者に対して社会貢献できる企業経営について講演したという驚くべき事実や、そこでの学生と当該人物とのやり取りを皮肉交じりに読者に伝えるという主旨を容易に読み取ることができます。
(2)日本語版記事による主旨の変更
ところが日本語版記事は、そのようなオリジナル記事の主旨をほぼ完全に消し去っています。それは、オリジナル記事の主旨を端的に示していると考えられる、先に引用した冒頭段落(引用①)が事実上完全に削除され、日本語版の最初の段落の「亀山氏は昨年 12 月には慶応大学から講演に招待され」という短い一節に痕跡を残すのみにされていることからもわかります。
オリジナル記事の主旨に替えて日本語版記事は、その主旨を、日本で有数の資産家となった亀山氏のビジネスとその手法を称え、氏の成功を美談として語ることに変更しています。
それは、日本語版記事のタイトル──「アダルト業界の大物が9位の資産家に──DMM 亀山会長の飽くなき起業精神」──にも表れていますが、より端的には、オリジナル記事の冒頭段落を削除したかわりに、オリジナル記事にはなかった次のリード文を独自に入れたことによって示されています。
「メディアには一切顔を出さないことで知られるその男は、目立たない身なりで現れた。アダルト動画(AV)配信サイトの成功で財をなし、今ではネット上でゲーム配信から外為取引、英会話まで幅広く手掛け、国内有数の資産家にのし上がった DMM ホールディングスの亀山敬司会長(56)だ」
(3)日本語版記事による編集・改変
日本語版記事は、“亀山氏のビジネス(手法)を称え、氏の成功を美談として語る”という主旨に合わせて、次の3つの方法でオリジナル記事に編集・改変を加えています。①オリジナル記事の文章構成を、原型をとどめないほどに切り刻んで再構成すること、②日本語版記事の主旨に合う情報を付け加えること、③日本語版記事の主旨に合わない内容を削除・改変すること。ここでは、②と③について具体的に示します。
①オリジナル記事の文章構成の原型をとどめないほどの再構成
(省略)
②日本語版記事で付け加えられた情報
細かな情報を含め多岐にわたるので、ここではすべてを羅列するのではなく、次の5種類に分類し、それぞれについて代表的なものだけを引用します。(a)亀山氏自身の発言、(b)亀山氏が AV で成功した手法、(c)亀山氏の現在の多角的な事業経営に関すること、(d)AV 出演強要事件に関すること、(e)亀山氏の生い立ちに関すること。
(a)亀山氏自身の発言
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「『アダルトは嫌いじゃないけど、あんまり見ない。FX もゲームもやらない。仕組みを作ってチャリンチャリン。一番いいよね』と話す」
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「亀山氏は『俺は好きじゃないけど、うちにもいろいろタイプがいて、きっと人を楽しましてくれるし、それもありかな。俺にはクリエイティブなセンスがないから』と自分以外からのアイデアも歓迎する」
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「『全部自分好みで作ると俺が死んだら会社がだめになる』と事業存続には若手などの意見が欠かせないと語る」
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「ビジョンはないし、売り上げ目標もない。なんとなく今に至ったという感じ。だから、これからも『来年はもうちょっとマシにしようぜ~』ってことで無理しない」
(b)亀山氏が AV で成功した手法
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「レンタルの他に AV の版権取得・販売事業を始めた」
(c)亀山氏の現在の多角的な事業経営に関すること
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「現在では一般大衆や家族うけのするオンラインゲームや漫画、英会話学校のほか、割引電話サービス、総発電規模 3 万 6000 キロワットに上る太陽光発電事業の運営など多岐にわたる」
(d)AV 出演強要事件に関すること
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「亀山氏自らが創業したAV版権取得・販売会社は撮影やスカウトは外部委託しており、事件との関わりはなかった。この後、亀山氏は同社を売却している」
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藤原志帆子氏のコメントに、DMM の責任を否定したり、DMM にエールを送ったりする内容を付加(後述)
(e)亀山氏の生い立ちに関すること
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「苦労人」(小見出し)
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「亀山氏の親は『ちょっと落ちこぼれた少女たち』に部屋を用意し」
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「将来の稼ぎに疑問を抱き」
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「10 代後半には生活のためキーホルダーなど売る露店を出した」
③日本語版記事で削除・改変された内容
まず、日本語版記事で削除された主な内容には、以下のものがあります。
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冒頭段落(記述)
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上に関連して、大学での講演の内容、学生の関心が、「社会貢献できるビジネス」にあったこと
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亀山氏が AV の制作もしていたという情報(オリジナル記事第 24、57 文)
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藤原志帆子氏の DMM を批判するコメント(後述)
次に改変ですが、日本語版記事が、自らの主旨に合うように英語版オリジナル記事を編集・改変した手法で、最も深刻な問題をはらんでいるのが、主旨に合わないオリジナル記事の内容を(単純明快に)削除するのではなく、内容を改変して掲載したことです。改変は、AV 出演強要事件に関して、「亀山氏にも一定の責任がある」(オリジナル記事第 42 文)という趣旨のことを述べた藤原志帆子氏のコメントに対して行なわれました。オリジナル記事では、藤原氏のコメントは次のようになっています。
“The company got where it is by choosing to ignore the many different ways that women are being forced into this,’’ says Shihoko Fujiwara, head of Lighthouse, a Tokyo-based non-profit organization working against sex trafficking.
これは、本来次のように翻訳されるべきものです。
「東京に拠点を置き、人身売買の問題に取り組む非営利団体ライトハウス代表の藤原志帆子氏は、『DMM が今日の地位にあるのは、女性たちが多種多様な方法で AV への出演を強制されていることを意図的に無視してきたからです』と述べる」
ところが、日本語版記事は、ここの部分を次のような内容で置き換えました。
「東京に本拠を置く非営利団体『ライトハウス(灯台)』の藤原志帆子氏は、DMM には法的問題はなく、事件とも直接関係ないとしながらも『これまでの DMM の成り立ちや、事件が社会問題化した現実も踏まえ真摯に向き合い対応した上で発展していってほしい』と指摘。業界には自主管理の徹底を促した」
藤原氏からの抗議を受け、9 月 1 日に当該部分は次のように「訂正」されました。
「東京に本拠を置く非営利団体『ライトハウス』の藤原志帆子氏は、『これまでの
DMM の成り立ちや、事件が社会問題化した現実も踏まえ真摯に向き合ってほしい』とし、『発展していくのなら、それをやってからにしてほしい』と指摘。業界には自主管理の徹底を促した」
しかし、「訂正」された後も、英語版オリジナル記事の内容とはかけ離れたままであることに変わりはありません。藤原氏の抗議を受けて訂正したのですから、日本語版記事の非は明らかですが、より重要なことは改変された内容と理由です。オリジナル記事における藤原氏のコメントは、DMM に対する批判、しかもそれだけであるのに対して、最初の日本語版記事は、その批判コメントに置き換えて、オリジナル記事にない DMM を免罪する発言や、DMM にエールを送るコメントに改変しました。このような改変が必要となった理由は、藤原氏のDMM を批判するコメントが、日本語版記事の主旨とって不都合だったからだと容易に推定できます。しかし、こうした改変処理はオリジナル記事の著者に対して背信的であるだけでなく、読者に対しても極めて不誠実であり、それを放置するならば、貴社の報道機関としての質に疑問が挟まれざるを得ないものです。
以上