金銭セクストーション被害が急増しています
ぱっぷすには、連日数十名の方々から、SNS(Instagramや言語交換アプリなど)で知り合った人物に、自分の性的な画像や映像をもとに金銭を要求する(脅迫する)相談が寄せられています。
「金銭セクストーション」としてマニュアル化された犯罪行為として国際問題にもなっています。
この脅迫手法に対抗するため、以下の方法を提案します。
一刻も早くブロック・通報すれば被害は最小化します。
24時間以上繋がり続けてしまうと性的画像が送られるリスクが増大します。
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相手との会話をスクリーンショットで撮ってください。
(スクリーンショットの取り方がわからない場合は、次に進んでください) -
脅された性的画像はダウンロードしてください。
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金銭は一切支払わないでください。(既にお金を支払われた場合、これ以上は支払わない)
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ブロックをして一切の連絡手段を遮断してください。
(ブロックせずに無視だけすると性的画像が送られるリスクが増大します)
対応方法(共通)
インスタグラムでつながっている場合
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相手をブロック
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グループチャットは退会
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非公開アカウントに設定
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ご自身のアカウントのユーザー名を変更
電話番号・メールを教えてしまった
iPhoneの場合
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メッセージアプリ→トーク履歴の表示→相手の電話番号・メールアドレスをタップ→この発信者を着信拒否
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IPhoneの設定(歯車アイコン)→メッセージ→iMessageをオフ。
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IPhoneの設定(歯車アイコン)→Facetimeをオフ
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iMessageをオフにしてもSMSの受信ができてしまいます。以下の「海外からのSMSを着信拒否」も実施してください。
LINEでつながっている場合
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相手をブロック(相手のユーザー名を長押し)
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設定→友達→「友達自動追加」オフ「友達への追加を許可」をオフ
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設定→プロフィール→「IDによる友達追加を許可」をオフ
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ご自身のQRコードを送ってしまった場合は、マイQRコードを表示、下部にある「更新」ボタンを押す
Telegram・怪しいアプリを入れさせられた
主に、Telegram, WhatsApp, Twitter, CakaoTalk などが使われます。公式ストア以外のアプリをインストールするよう求めてくる場合もあります。
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アプリのアカウントを廃止・削除
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アプリをアンインストール
継続して脅しが続いている・どうしたらよいかわからない場合は、ぱっぷすの相談窓口に相談・警察に通報してください。
対応方法(共通)
既に性的画像が第三者に送られたかもしれない場合
画像はイメージです
性的画像を送った直後の様子を画面キャプチャしてご自身に送り付けてくる場合がありますが、多くの場合は送られておらず、送信してすぐ取り消している場合があります。
Instagramは、非公開アカウントに対して画像を直接送り付けることはできません。
セクストーションは特殊詐欺であり、あなた自身の不安を急激に増幅させ、不安から逃れたいためにお金を支払わせることであり、第三者に画像を送り付けることが目的ではありません。
もし、知人・友人からから実際に届いたと連絡があった場合、現在脅されている動画や画像をダウンロードして保存している方は、StopNCII・Takeitdownに性的画像からデジタル指紋を抽出し登録しておくと、Instagramや他のSNSでの投稿や拡散を未然に防ぐことができますのでお勧めです。
18歳以上のかた:
StopNCIIは日本語版がありませんが、ブラウザの翻訳機能を使いながら登録ができます。
知人から性的画像が届いたと連絡があった場合
ダメージコントロール(ダメージや被害を必要最小限に留める)ために、
性的画像が届いた方に対し、下記のように説明をされる方もいます。
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ディープフェイクポルノを作成されてしまい現在脅されている。
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リベンジポルノ被害にあって現在脅されている。
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セクストーション被害にあって脅されている。
事前に、Instagramのストーリーに怪しい画像が送られてきたときは教えてほしいとアナウンスされる方もいます。これらは、あなた自身の不安の軽減として有効な方法として考えます。
もし、あなたが性的画像が手元にない場合は、性的画像が届いたか方から入手して、上記のSTOPNCII、Takeitdownへの登録をお勧めします。
セクストーションとは?
「セクストーション」とは、Sex (性)+ Extortion(脅迫)を合わせた合成語で、性的なゆすりや性的な脅しという意味を持ちます。例えば、SNS等を通してネット上で親しくなった相手から「性的な写真を送ってよ」「ビデオ通話で自慰行為を見せ合おう」など持ち掛けられ、顔写真とともに体の性的な部位や下着などを送信するように、またビデオ通話の場合はリアルタイムで映すように巧みな言葉で誘導されます。その時に相手は、送信した画像・動画を保存をしたり、ビデオ通話に応じた際の様子を同意なく無断で撮影(盗撮)するのです。その後、保存(撮影)した画像・動画はもとより、これまでテキストで行っていた性的なやりとりを「ネットで晒すぞ」と脅します。相手の要求に応じたとしても、繰り返し不当な要求や脅迫を繰り返して被害者を追い詰めるという犯罪行為なのです。被害者の多くは、性的な画像や動画を送ってしまったことの後ろめたさから、誰にも相談できず精神的に追い詰められることにより、孤立化に繋がるのが特徴です。
これまで悪意のある人と接した経験や人から騙された経験がない18歳未満の子どもの場合はより深刻です。「そんなことをする子ども」と親を失望させてしまうことを恐れるため、誰にも相談できず、諦めて加害者の言いなりになってしまうことも少なくありません。実際に当団体に繋がった児童のなかにも、誰にも打ち明けられず、自殺を試みて初めて親が知ることに至った方もいました。18歳未満の児童の人身取引の定義として「搾取の目的で児童を獲得し、輸送し、引き渡し、蔵匿し、又は収受すること」(国際組織犯罪防止条約人身取引議定書 第3条)があります。セクストーション被害はまさに性的搾取を目的に児童から性的画像・動画を収受しており、人身取引のひとつであると言えます。すでに米国国防総省では、2023年1月の人身取引防止月間のテーマとしてセクストーションが取り上げられています。
セクストーション被害人数
セクストーションの2つのパターン
セクストーションは、主に2つのタイプに分けられます。
1つ目は「支配」を目的としたセクストーション
特に女性が被害にあいやすく、加害者は、被害者との恋愛感情を利用して、自慰行為の動画を送らせたり、性行為中に写真や動画を撮らせたりします。そして、関係が終わった後に、その動画や写真を使って「性的な画像をもっと遅れ」「交際中にかかったお金を返せ」「もう一度付き合おう」などと脅してきます。
被害を受けた場合は、被害者が自分の権利をしっかりと主張していくことが重要です。例えば、性的な画像を第三者に提供した場合は犯罪であり、刑事罰の対象になることを加害者に伝えることが有効です。また、一度権利を伝えた後は、加害者とこれ以上やり取りをしないことも重要です。返信を続けることで、相手は「まだ脅す余地がある」「俺に好意がある」と誤解する可能性があるためです。被害者が16歳未満の場合は、性的画像の送信要求罪、18歳未満の児童が性的画像を送信してしまった場合は、児童ポルノ禁止法(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律)のほう助罪が成立します。早期の警察への相談も重要です。18歳以上の場合では、不同意撮影罪(盗撮)・実際に拡散した場合はリベンジポルノ防止法(私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律)に違反する場合があります。
被害者の多くは、事態が悪化することを恐れ何もしないことを選択しがちですが、それはさらに状況を悪化する原因となります。自分の権利を行使することで、加害行為を抑止できる可能性が高まります。被害者には法的な保護があるため、実は状況を反転させるボールは被害者が持っている状況です。このことを相手に通知をすると、相手は「逮捕されるかもしれない」と不安や恐怖に襲われて、被害者と加害者の立場が急に逆転するのです。
2つ目は「金銭」を目的としたセクストーションです。
特に男性が被害にあいやすく、加害者はSNSで被害者に近づき、1対1のやり取りを通じて信頼を築き、性的な画像を送らせる、ビデオ通話であれば女性から「体を見せて」と頼まれて裸を見せた際にその様子を盗撮して、その画像や動画をもとに被害者のSNSのフォロワーに送られたくなければお金を支払えと脅します。加害者は被害者の不安を最大限に煽り、例えば、カウントダウンで「あと20秒・・・10秒で拡散する」などと言って被害者を恐怖に追い込みます。被害者はその恐怖から逃れたい一心で、お金を支払ってしまうのです。また、加害者はInstagram以外のSNSや電話番号を聞き出し、ブロックされた場合に備えることもあります。
ここで重要なことは、お金を払ったら消してくれることはまずありません。一度でもお金を支払うと、犯人は「騙されやすい相手」とみなし、さらに脅迫を続けてくるという点です。決して絶対に金銭を支払わず、SNS上での一刻も早くのブロックと警察や信頼できる人、支援団体に相談することが重要です。
セクストーション被害が増加している背景には、若者の間で「性的な写真や動画を撮影すること」が一般的になってしまった現状があります。このような状況では、被害や加害を未然に防ぐために、「性的な写真や動画を撮ってもいい?」と尋ねること自体がデジタル性暴力であるという認識を広めることが重要です。
金銭セクストーションの加害者の手口
実際のセクストーション被害で行われている加害者の手口についてまとめました。
ザイオンス効果(単純接触効果)
はじめのうちは興味がなかったものも特定の人物から短時間に繰り返し接すると好意度や印象が高まるという効果。セクストーションでは、SNSのDM(1対1のやりとり)においてザイオンス効果が起きやいと言われています。
01
フット・イン・ザ・ドア
最初に小さな要求を受け入れさせ、その後徐々に大きな要求をすることで、最終的に目的の要求を受け入れさせる心理です。たとえば、一度でも性的な画像を送ってしまうと、次も断れなくなり、さらに過激な画像を求められることがあります。「段階的要求」ともいいます。
03
恐怖心の喚起
興奮や恐怖、不安などの感情には、脳の「扁桃体」という部分が大きく関わっています。扁桃体は感情をコントロールする中心的な役割を持っており、興奮状態になると体内でアドレナリンが分泌され、呼吸や心拍が速くなり、汗が出ます。これは「向き合うか or 逃げるか」を準備するためです。セクストーション被害では性的興奮状態で恐怖を感じると脳の判断を誤らせることができます。
05
認知的不協和の解消
罪悪感の低減として、消極的な解消法の選択。お金を払うことで最悪の事態は避けられる、これは勉強代だと言い聞かせ「お金を払えば」楽になれと信じお金を支払われます。
相手に弱みを持たれていると「これは詐欺だ」という認知を受け入れられずに、相手の言われるがままにお金を渡してしまいます。認知的不協和による不快に感じて解消しようとする心理的メカニズムによって、判断をゆがませてしまいます。
07
フット・イン・ザ・ドア(譲歩的要請法)
金銭セクストーションは、最初に少額(例:2万円)を振り込ませ、その後、徐々に要求金額を増やしていく手法です。最初にお金を払った後、相手は「パソコンやクラウドに保存している」「別のスマホでも録画している」などと脅し、さらにお金を要求してきます。このようにして、被害者は多額の借金を抱えることになります。注意が必要です。
09
返報性(へんぽうせい)の原理
相手から画像を受け取ったら、お返しに画像を送らなければならないという感情。セクストーションでは、相手から性的な写真が送られてきた、ビデオ通話で相手から脱いできた場合、自分自身も同じように脱がないといけないのではないかと感じてしまいます。
02
正常性バイアス→パニックにさせる
正常性バイアスとは、危機的状況でも「大丈夫」と思い込む心理的な反応です。地震などの災害時にこれが強く働くと、逃げ遅れたり、対応が遅れて被害が大きくなることがあります。男性のセクストーション被害では、男性の性的な写真や映像が脅しになるなんてない、男性が被害にあう認識を持てない社会背景があるために、いざ脅されるとパニックを招く原因となります。
04
考えるいとまや余裕を与えない
あと20秒・・・10秒で拡散するとカウントダウンが行われると、人は考える余裕が奪われていき、加害者の言うことを信じて行動してしまいます。これは、いろいろな特殊詐欺に共通する手口です。焦らせることで、判断力を奪うのが狙いです。
06
ドア・イン・ザ・フェース
「吹っかけておいて、少し譲歩する」というやり方です。20万は払えないなら、2万で許してあげます。若年層のセクストーション被害では、あえて減額させて、断れない状況を作り出すことができます。他にも、ありもしない貸しを作り、利害の共同体(組織それ自体またはその構成員の生き残りと安寧を目的とする組織)として引き込んでいく場合もあります。
08
サンク・コスト・バイアス(コンコルド効果)
金銭セクストーションでは、相手が「お金を払わなければ情報を拡散する」と脅してきます。被害者は、騙されているとわかっていても、今まで支払ったお金が無駄になるのが怖くて、さらにお金を支払ってしまうことがあります。これが「損失回避」の心理です。だから、冷静に判断することが大切です。
10
ぱっぷすは、性的搾取・デジタル性暴力にあわれたかたのサポートをしています
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アウトリーチ:支援が必要であるにもかかわらず届いていない人に対し声掛けなどを行い福祉が積極的に働きかけて情報・支援を届けるプロセスのこと。
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削除要請:本人に代わって拡散した性的画像記録の削除要請を行うこと
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アドボカシー:広報・啓発・政策提言などのこと