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PAPSメルマガ vol.63 もう一つの“Me Too”


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 昨年、アメリカの有名紙が映画界のプロデューサーの重鎮、ハーヴェイ・ワインスタインが長年にわたって女性へセクシュアル・ハラスメントを行ってきたことを記事として取り上げました。この記事をきっかけに被害にあってきた女優たちが、“私も”、“私も”と名前を出して訴えるようになり、また、ツイッターで被害にあった人たちみんなに声を上げるよう呼びかけました。これをきっかけにみるみるうちに運動として広がっていき、アメリカのみならず、ヨーロッパ各国にも飛び火し、アジアでは韓国も盛んに“私も”と呼応するようになりました。

 女性にとってセクシュアル・ハラスメントを受けることは、非常に屈辱的でかつ苦痛な事なのですが、訴えると逆に訴えた女性の方が非難の嵐に見舞われるという状況は世界共通です。そのような社会的ベースがあって昨年からの“Me Too”運動は世界的に注目されてきましたし、広がりを見せてきました。

 このような世界の動きの中で、日本では“Me Too”運動が他の国々ほどには盛り上がらないことが返って世界の注目の的にもなっています。ジャーナリストの伊藤詩織さんはTBSのニューヨーク支局長から準強かん(酩酊させられて強かん)されたと被害を訴えましたが、結局刑事事件としては起訴されず、現在は民事で闘っています。この間の事情に関しては、伊藤詩織さん自身が「Black Box」という本を書いて詳細に伝えていますが、彼女に対する非難もすさまじく、日本でジャーナリストとして活動ができず、外国に本拠地を構えての仕事をせざるをえない状況です。

 日本ではなぜ“Me Too”運動が盛り上がらないのでしょう?

 日本には日本の形のもう一つの“Me Too”があります。

 それは、ぱっぷすに寄せられる“相談”という形の“Me Too”です。

 2012年に初めて一件の相談がありました。その時には、私たちもまさか現在のように多くの相談が寄せられ、そのことによって各省庁が動き、国の政策に反映されるようになるとは考えてもいませんでした。最初の1件目の相談時は正直のところ私たちに力量がなく、何をどうしていいのか分からずに右往左往しているうちに、弱く握られていたその手を強く握り返し引き寄せることができず、離れていきました。2件目の相談では、最初の失敗から多くのことを学ばせてもらっていますから、相談を寄せてきた方の願いをかなえることができました。

 このような相談事例をぱっぷすのホームページに載せたり、ご協力いただいた弁護士のホームページに掲載頂いたところ、みるみるうちに“Me Too”となって相談件数が増えていきました。今までアダルトビデオには被害者はいない、何故ならあれはファンタジーで“大人のお話”なのだし、出演している人はファンタジーを納得しているのだから、と言われていた世界です。ファンタジー神話は根強く、最初20件ほどの相談が寄せられていた時期には、なんだ、たったの20件かそこらじゃないか、それに出演者が自分に不利なことを隠して嘘ついているんじゃないか、などと揶揄されていました。

 しかし、最初の1件目から数えれば500件を超える相談が寄せられ、今では毎月10件は新規相談が入ります。誰も、アダルトビデオの世界に性被害があることを否定できなくなりました。ほんの5,6年の動きです。

 相談者一人ひとりは自分の問題を解決したくて相談を寄せてきます。その方たちには運動に“参加”しているという意識はないでしょう。しかし、この500人を超す方たちが相談という形で声を出して下さったことで、この声を基に私たちや弁護士、関係団体などがアダルトビデオの中の性被害を世間に伝えることができるようになったのです。

 一人ひとりが声をあげやすくなった一因に相談窓口が設置されたことが極めて大きく影響しています。困っていて、相談したい方々とつながることができたからです。

 ビデオの技術が開発されてすぐにアダルトビデオが作られ、並行するように数は極めて少ないのですが、アダルトビデオの製作現場を舞台とした訴訟事件も起きていました。有名なところでは、2004年におきたバッキービジュアルプラニング事件です。出演させられた女性たちは重傷を負い、加害者たちは非常に重い実刑判決を受けて収監されました。この事件以前にも単発的に有罪になる事件はありました。

 このように、刑事事件に問われるような事件はありましたが、社会問題に発展することはありませんでした。悔しい思い、訴えたい思いをした方たちはいたことでしょう。この方たちにとって警察に行くのはハードルが高かったのではないでしょうか。

相談窓口を設置したことによって、個人的な被害体験を相談という形で集積することができるようになりました。潜在化していた大きな社会問題の可視化に成功したのです。

 支援団体への相談は個人的問題の解決を目的としていますが、結果的には相談という形で訴えることで、この問題に苦しむ方たちの共通の問題にもなりました。

 これは日本独特の“Me Too”運動ではないでしょうか。

《 第2回 ぱっぷす活動報告会:アイドルの憧れとその落とし穴 》

「あのアイドルグループ/女優/モデル/歌手も頑張って同じことをしているでしょう?

芸能界ではみんなが通る道。どうして君はできないの?」そう言われて走ってきた。

ここに「相談」と言う形で寄せられる「Me too」の声があります。

スカウトや、応募してアイドルとしてデビューし芸能活動をしてきたけれど、初めてのDVD撮影があるといわれ、応じたら過激なグラビア撮影だった、撮影のときは「どうしてできないの?」などと言われ、脱がない方があたかも悪いかのように思って応じた、といった方からの相談がぱっぷすには複数寄せられています。たとえ芸能事務所を変更しても、これまでの撮影によって芸能活動の足かせになり困っている、マネージメントと称したパワハラによって強迫観念にさいなまれ辛い思いをされている相談者もおられます。芸能界でのセクハラやパワハラが少しずつ可視化されつつありますが、訴えたくても訴えられない現状も見えてきました。活動報告会ではこのような芸能界における人権侵害の問題について一緒に考えていきたいと思います。

日 時:2018年11月22日(木曜日)19:00~20:30

場 所:渋谷男女平等センターアイリス 1号~3号会議室

 (東京都渋谷区桜丘町23-21 渋谷文化総合センター大和田8階)

最寄駅:渋谷駅南口より徒歩5分

参加費:無料

定 員:30名

申込方法:応募フォーム https://goo.gl/forms/OL9U3E8RIUYZ8u9d2

もしくは、paps@paps-jp.orgまでお名前とご所属先をお送りください。


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