「性的画像の削除要請の活動報告(2022年度) 」
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メルマガVol.134「デジタル性暴力と拡散した性的画像の削除要請の活動報告(2022年度) 」



スマートフォンが普及した世の中で、性的搾取ビジネスは SNS やアプリなどを介して巧妙化しつづけています。ぱっぷすには年間1200件程(2022年度)の被害相談が寄せられており、被害は大人だけではなく子どもにも広がっており、被害相談の低年齢化が進んでいることを感じています。


「『撮っていいよ』って言ってないのに性的な写真を撮られた」


「性的な画像・動画がネットで晒されて、SNSやアダルトサイトで拡散している」


「拡散に気がついてから精神的にきついし、眠れなくなって、仕事も生活もなにもかも、おかしくなってしまった」


インターネットやSNSなど、デジタル技術を用いた性暴力のことを私たちは”デジタル性暴力”と呼んでいます。デジタル性暴力は21世紀の新しい形の性暴力です。本来はプライベートなものとして秘匿されるべき性的画像・映像が、ネット空間で瞬く間に拡散して、誰にでも見られるものになってしまう。それによる加害 / 被害への認識や防止策、被害救済の具体的な仕組みは追いついていません。


デジタル性暴力の被害者支援としての”削除要請”




デジタル性暴力やAV出演被害に関する相談支援を行う中で、相談者から「自分でネット検索して、画像や動画を探し出すことは精神的にもつらい。なんとかならないでしょうか?」という声がいくつも寄せられました。その声をきっかけに削除要請事業は始まりました。

最初は無償のボランティアスタッフが数名で対応していましたが、現在は有償スタッフ10名程がチームで取り組んでいます。経験年数の長いスタッフが新しいスタッフに業務のレクチャーをしています。性的な画像・映像記録を探し出して確認して、削除要請を送ることを繰り返す作業は過度なストレスが伴うものです。ボランティアで続けられるものではありませんでした。

2019年度から2021年度までの3年間は 独立行政法人福祉医療機構からの助成を頂いて、継続的に行うことができる体制作りに取り組みました。削除要請の活動内容は、相談者から委任を受けて意に反して拡散してしまった被害者の性的画像記録の削除要請を投稿者・サイト管理者・インターネット通信販売事業者に対して行います。さらに「違法性の確認・対応」「関係省庁とのデータ共有と報告」「海外連携による解決の模索」「情報発信と啓発」にも取り組んでいます。


本人の意に反して拡散させられた性的画像の削除要請


相談者から「削除してほしい」と依頼のあった性的画像記録について、2019年度に1万7389件、2020年度に2万2735件、2021年度に2万1876件の削除要請を行ってきました。


2022年度の削除要請の総件数は総件数は18,326件です。 内訳は、サイトに対する削除要請件数が16,121件、キャッシュ削除2,205件でした。(2023年3月31日時点)


削除要請16,121件に対するサイト側の対応は以下の通りです。


● 全て削除 8600件(53.3%)

● 一部削除 1319件(8.1%)

● 現存 6,114件(37.9%)

● 保留 88件 (0.5%) ※

※保留しているのは522エラー(サーバーのトラブル)など、404以外の表示がされているもの。しばらく時間をおいてから再度確認などの対応をしている。

ネットで拡散され続けるデジタル性暴力


相談者の意思を確認して、刑事事件化できる場合には法執行機関と連携をして対応をすることがあります。2021年度には被害届提出や警察が捜査を行うケースが10件、撮影者の逮捕に至ったケースが9件ありましたが、撮影者が逮捕されたとしても性的画像・映像が消えるわけではありません。

アフィリエイトやダウンロードサイトで収入を得ることを目的に拡散した性的画像動画(無修正)1 本を追跡調査したところ、1 本の動画が動画アップロードサイトに 4 件、画像サイトに 145 件ほど拡散し ており、当団体からの削除要請に応じないサイトは70件(内Cloud Flareが関連するケースが63件)にものぼりました。(調査日:2022年3月15日)

削除要請を送っても削除されないことも多く、削除に応じたように見せかけて数日後に再アップされていることもあります。警察は動画の削除には対応していないため、撮影者が逮捕された後も拡散は続きデジタルタトゥーとなって被害者を苦しめ続ける現状があります。


削除要請のスタッフからのメッセージ




世界中のサイトで消費される性的画像・映像について。限りない欲望なのか、軽い気持ちなのか、これらを視聴し拡散する人々がいることを知りました。こんなにたくさんの動画があったとして、それらは起承転結がほぼ同じ。残虐なものを除けば、多様性なんてほとんど無い。ここから世の価値観が確実に模られている怖さ。「私たちの性ってこういうものなんだっけ?」ふと、すれ違うあのひともこれを見てるのかと考えてしまう。全てを削除する過程での精神的な負荷の大きさは、この活動に従事して始めて知りました。スタッフKM


膨大な数のエロサイトが存在することに驚かされます。一度ネット上にアップロードされてしまうと、拡散され続け、利用され続けるという恐ろしい状況を目の当たりにしています。ITが発展する以前は全く想像できなかった状況で、急速な技術の発展に、法律も、世間の問題意識も追いついていないように思います。AV法や刑法(性的姿態等撮影罪)など、法律が整いつつある時代の過渡期の中で被害に遭われてしまった方の記録をできる限り無くせるよう、日々試行錯誤しながら削除要請を行っております。スタッフYM


性的画像を載せることは簡単でも、消すことはとても大変。それが今のネット空間です。削除要請をしていて特に高いハードルを感じるのは「身分証明書を提出するように」と要求されることです。個人情報までも丸裸にして紐づけようとする加害性の高い行為と対峙しなければならない。こうした要求を被害者自身が対応するのはかなりのストレスになるし、そのことで諦めてしまう人も多数いるだろうと想像します。この仕事も3年目。人権侵害との闘いの日々です。スタッフKU


2023年春から削除要請スタッフになりました。この活動に携わるなかで思い知ったのは、AVを作る/発信する/見る人たちの見ている世界は、普段AVを見ずにそれが身近ではない人とは全く違うということ。性的画像を見続けていると「相手を人間ではなく商品や道具として認識し、勝手に値段をつける傲慢な視点」を自分も内面化しそうになることに戦慄する。「AVを視聴すること」=「そこに映されているいる人の尊厳を消費する恥ずべき行為」という認識を社会に浸透させなければAVは無限に作られ続け、この男性優位社会で性暴力はなくならない。そう思い今日も削除要請をする。スタッフYD


想像を遥かに超えるアダルトサイトの量の多さ!削除要請をしても消してもらえない!!やっと消えても、数か月すれば再びアップされたり、新たなアダルトサイトまでできていたりする…。この現状に絶句しました。無修正の動画は男性の顔だけは隠されていて、この動画が違法だとわかっていて撮影しているのでしょう。画面に映るだらしない体形の男性たちに憤りを感じます。あの人たちの利益のために、いったい、どれだけ搾取されているか。もっと知ってもらいたいし、そんな状況を無くしたい、と思っています!スタッフAK


性は”尊重”するものではなく、”消費”するものとして日本では捉えられがちです。女性ですらそんな感覚の人が多いのではないでしょうか。知識もないまま性被害に遭う人が未だ絶えません。そんな現状でありながら性教育にも積極的ではなく、若者を保護しようという意思が感じられません。NPO組織や民間、個人が動かなければならない状況は先進国として異常だと思います。削除要請は途方もない取り組みのように感じますが、そんな中でも「ここから変えていく」という意識で地道に活動し続けていきます。スタッフKN

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