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2025年4月の活動報告

  • 執筆者の写真: Admin
    Admin
  • 7 日前
  • 読了時間: 9分

更新日:6 日前

ぱっぷすのスタッフと夜カフェ利用者15名でのイベント
ぱっぷすのスタッフと夜カフェ利用者15名でのイベント

― 揺れる社会のなかで、立ち止まらず向き合う ―


4月は、新年度の始まりとともに、設立メンバーである宮本節子さんが、スーパーバイザーを引退することになりました。しかし、相談支援もひっ迫していることもあり、現在も関わりを持ち続けていただいています。現場を知り尽くした視点と経験に基づくアドバイスは、今なおぱっぷすの活動にとって大きな支えとなっています。

4月はこの他にもあまりにもたくさんのことがありました。すべてを語りきることは難しいほどでした。ここではその一部を、簡潔にお伝えいたします。


【1】相談支援、セクストーション、孤立と回復

都内の繁華街の様子 ぱっぷすのスタッフに声をかける違法スカウト
都内の繁華街の様子 ぱっぷすのスタッフに声をかける違法スカウト

今月も、デジタル性暴力被害を含む多数の相談が寄せられ、スタッフはその一つひとつに対応を続けています。4月は「セクストーション(性的脅迫)」の相談が爆発的に増え、ある日には20人の対応をしました。心理的にも、物理的にも過重な状態に置かれるなかで、ぎりぎりの中で支援が続けられました。

 

春は「出会いと別れの季節」とよく言われますが、同時に、若い人たちが性的搾取の被害にあいやすい、危険な季節でもあります。私たちは3月から4月のこの時期を「暗黒の春」と呼び、注意を呼びかけています。

 

なぜ「暗黒」なのか──。

 

それは、18歳で成人となったばかりの若者たちが、進学や就職で地方から都市に出てきて、慣れない環境で頼れる人もおらず、不安や孤独を抱えているとき。そんなタイミングを狙って、加害者が近づいてくるからです。

 

「簡単に稼げるよ」「夢を応援するよ」など、甘い言葉を投げかけて、気づけば性風俗や性売買の世界に巻き込まれてしまっていた。そんなケースが、今や都内の繁華街では珍しくない光景になってしまっています。

 

スカウト・キャッチの客引き行為に関するポスター
スカウト・キャッチの客引き行為に関するポスター

けれど、そうした中でも、自分の力で状況を変えたり、必要なときに誰かと出会えたことで、搾取の連鎖から抜け出し、大学を卒業できたと報告してくれる方もいます。そうした一人ひとりの声は、私たちにとってとても大きな希望です。

 

でも、その「希望」の背景には、決して忘れてはいけない現実があります。

 

そこには、逃げ場のない家庭環境や、精神的・経済的な束縛、そして性暴力といった、過酷な背景が隠れていることが少なくありません。そうした苦しみや孤立のなかで、居場所を失った瞬間を、加害者は見逃さないのです。 


「大丈夫だよ」「みんなやってる」「君だけは特別」

 

一見優しく聞こえるこれらの言葉は、実は“依存”と“服従”を生み出すための、巧妙なトリックです。加害者は「居場所に見える搾取の場」へと若者たちを誘い、心や体、そしてお金までもコントロールしていきます。彼女たちの不安や孤独でさえ、加害者にとっては“利用するための手札”でしかありません。

 

 

【2】削除要請と制度の限界に挑む

今月も、多くのプラットフォームに対して、性的な画像・映像の削除依頼の対応を行いました。でも、その道のりは決して平坦ではありません。


あるプラットフォームでは、「顔が映っているだけでは削除対象にならない」という制度的な壁に加え、ガイドラインが曖昧だったり、通報の仕組み自体が整っていなかったりと、対応の難しさが浮き彫りになりました。通報しても、却下されるケースもあります。それでも相談者の方々の性的な映像が、ご本人の意に反した形で拡散されている状況を 「放っておくわけにはいかない」と、スタッフたちはどこかに規約違反がないか粘り強く探し出し、少しでも通る可能性があるよう工夫しながら申請を続けています。


YouTubeでは、街中を歩く若い女性を無断で盗撮し、まるで商品を品定めするように扱う動画が増えています。こうした動画への削除要請では、相談してくれた方の個人情報をしっかり守りながら対応できるよう、ぱっぷすでも試行錯誤を重ねています。現在は、削除依頼に必要な委任状のフォーマットを統一する取り組みが進行中で、あるケースではこの方法で削除が無事に完了しました。この成功をきっかけに、今後はより多くの相談にスムーズに対応できるよう、仕組みの標準化も進めていく予定です。


一方で、同じプラットフォームなのに、申請する日によって対応が変わるという悩みもあります。「この動画は削除対象ではない」「カテゴリが違う」といった理由で差し戻されたり、逆に情報開示が進んだりと、一貫性のない対応に戸惑う場面も少なくありません。「なぜこんなに差が出るのか」という落胆の声もあがりますが、それでも現場のスタッフたちはあきらめず、一件一件、申請を重ねています。

  

【3】夜の街から──悪質な「地下アイドル」商法


4月初め、雨がしとしと降る肌寒い夜のこと。いつもならにぎわっている繁華街も、この日は人通りが少なく、どこか静まり返っていました。

 


東京都内の繁華街の様子
東京都内の繁華街の様子

けれど、その分キャッチやスカウトの声かけはいつも以上にしつこく、張りつめたような緊張感が漂っていました。

 

そんな中、私たちは多くの10代半ばから20代前半の若い女性たちと言葉を交わしました。立ち止まって話を聞いてくれる人、静かに資料を受け取ってくれる人、それぞれの反応のひとつひとつが、心に残る出会いでした。

 

ある日、ハンドバッグとサイリウムを手に、路上でうずくまっていた10代の女性に出会いました。「推しに殴られた」「死にたい」と繰り返す彼女の言葉は、ただの失恋や依存では済まされない、深刻な性的搾取の被害そのものでした。

 

既に、地下アイドルに数百万円を貢ぎ、その資金は性売買で得たもの。学校も辞め、生活のすべてが“推し”を中心に回っていたといいます。

 

彼女にとって「推し」は、唯一の居場所であり、自分の存在価値を証明する対象でもあったのでしょう。しかし、その実態は、強い帰属意識に基づいた構造であり、地下アイドルというカリスマ的リーダーのもと、「TO(トップオタク)」になることを目指させられ、そのためには、大量の課金や遠征、従属的な関係が日常となっていきます。

 

やがて推しとの関係が生活のすべてとなり、「推しと関係を持てる人」と「持てない人」の線引きが生まれます。

 

「TO」という「選ばれし者」の地位の裏には、絶対的な忠誠と献身という名の多額の上納金が求められ、その手段として性的搾取が平然と行われていたことでした。

 

地下アイドルが「推し活」や「熱狂的ファン」と片づけられがちの裏には、ホストクラブ商法・AV出演被害と同様に、性的搾取やマインドコントロールの手法がちりばめられています。今回の出会いを通じて、その構造の根深さと残酷さに改めて向き合わされました。

 

【4】八代亜紀さんをめぐる「死者の人権」と生成AIのリスク


故・八代亜紀さんの不同意と思われる未公開ヌード写真が、CDとセットで販売されようとしていた問題が共有されました。

 

この問題は、アダルトビデオ業界でたびたび起こりうることでしたが、今まさに芸能界にも広がろうとしています。被害者の死後、AV商品の販売を止めることは困難です。

今回の問題により、被害者の死後に歯止めになる法律がないことが知られ、一般の人にも被害が拡大するのではないかと懸念しています。

 

あるスタッフは深い悲しみと憤りを抱え、「亡くなった人だから何をしてもいいというわけではない」と言い、別のあるスタッフは「生成系AIによる性的な復元の可能性も起きうるだろう」と言及しました。実際、インターネット掲示板では、「死んでると抜けない」「ハメ撮りを今のうちに撮りためろ」といった残酷な言葉が散見され、それらを目にしたスタッフは「何も言えなくなる」と静かに語りました。

 

【5】韓国出張報告――制度の違いと学びの共有


韓国KCSVRCとのミーティング、エンパワメントできました
韓国KCSVRCとのミーティング、エンパワメントできました

韓国の性暴力被害者支援現場の他団体の視察に、ぱっぷすスタッフ2名が同行し、女性支援団体や青少年支援団体、国会議員の方と意見交換を行いました。特に印象的だったのは、不同意性交罪が韓国ではまだ整備されていないことへの驚きと、日本でそれが成立した過程への関心の高さでした。


一方で、韓国では児童ポルノに対する法定刑が日本よりも高く公訴時効も長いこと、加害者への予防教育も充実していることがわかりました。2019年には、「デジタル性犯罪被害支援センター」が新しく創設され、ワンストップ支援が行われていることを学びました。


デジタル性暴力の被害に関しては、これまでぱっぷすと連携して被害者支援を行ってきた、韓国のKCSVRC(Korea Cyber Sexual Violence Response Center)のスタッフの皆さんとミーティングを行うことができました。KCSVRCは2007年に設立され、20代~30代の若い世代で構成された団体です。主な活動内容は、被害者支援(法的支援、心理相談、精神科への紹介など)、ロビー活動、教育、社会への問題提起、そして性の商品化に対するモニタリングと報告です。ミーティングを通じて、韓国では2024年にディープフェイクポルノの合成を禁止する法律(性暴力処罰法第14条)が施行されるなど、法整備が一歩前進していることを学びました。

 

スタッフの募集についても意見交換が行われました。韓国でもソーシャルワーカーを確保するのが難しく、ある団体のスタッフは、フェミニストとしてこれまで生きてきた人を確保していけるどうかが重要であり、もし確保できなかった場合は、単なる「福祉サービス機関」に転落していくでしょうと語ったのが印象的でした。


【6】少し息をつく時間──雨の中のBBQから生まれたもの


4月下旬、雨が降る肌寒い週末の日。ぱっぷすのスタッフと夜カフェ利用者のみなさん15名ほどで、ささやかなバーベキューをしました。天気はあいにくでしたが、それでも6〜7名のカフェ利用者が集まり、「雨の中でも、これだけの人が来てくれたのが本当に嬉しかった」と語られるほど、温かく、心に残るひとときでした。

 

スタッフも緊張や慌ただしさとは少し違う、穏やかな会話や笑顔が自然に生まれました。お互いの存在を再確認し、ちょっとした失敗や笑い話も交えながら、心の距離を縮める時間になったように思います。相談支援の現場では厳しい判断や感情の揺れ動く瞬間が多く、ふと息をつく余裕が持てない日もあります。だからこそ、こうした「ただ一緒に過ごす」時間が、想像以上に大きな意味を持つのだと感じました。「また会おうね」「今度は晴れるといいね」そんな何気ない一言が、きっと次の現場を支える力になることを願います。


ご支援を通じて、性的搾取に巻き込まれた人々に回復をもたらします。皆さまのご⽀援が、性的搾取の問題を解決する⼤きな⼒となっています。


  • ぱっぷすの居場所、夜カフェの様子
    毎月1000円で (1日33円)年間で1日居場所がない女性に対して安心・安全な宿泊支援ができます。
    ぱっぷすの相談支援・オンラインアウトリーチの様子
    毎月3000円で年間で1日デジタル性暴力被害者の相談支援窓口が維持できます。
  • ぱっぷすの宿泊施設ひつじハウス
    毎月500円で年間1回繁華街での夜回り(アウトリーチ活動)で出会った若い女性に同行支援ができます。

 

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