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2025年5月の活動報告

  • 執筆者の写真: Admin
    Admin
  • 6月9日
  • 読了時間: 9分

東京都内の夜間のアウトリーチの様子 
東京都内の夜間のアウトリーチの様子 

流通する映像、止められる拡散 


5月の新規相談人数は366人、セクストーション被害が圧倒的に多かったのですが、AV出演被害の深刻な相談も複数寄せられました。撮影や出演に同意していない、または十分な説明がなされないまま撮影され、映像が公表されてしまったケースです。 


過去に撮影された映像が、本人の意に反してネット上で流通し続けているという相談も寄せられました。最近の傾向として、私的な性的影像が、加工して「AV」として販売されてしまっていたケースも増えてきました。10代の頃に撮影された動画が今でも配信サイトに掲載されているケースもあり、「もう止められないのでは」と強い不安を感じている声も寄せられています。


ぱっぷすでは、性的画像の削除要請なども行い、被害を少しでも止めるためのサポートを行っています。削除要請を数年間続ける、Googleなどのネット検索をしても、簡単に見つけづらくなるくらい削除できたケースもあります。 

 

特に、AV出演被害防止・救済法が2022年に施行されて以降、出演契約の取消しや公表の差し止めが成功した事例も多くあります。被害に遭った方が「泣き寝入り」せずに済むよう、私たちは寄り添った対応を大切にしています。「これって被害なのかな…」と迷うときこそ、ご連絡ください。一緒にできることを考えていきます。 

 

 SNSから始まる脅迫──セクストーション被害も急増中 


「画像を送ったら、突然“お金を払わなければばらまく”と脅されました」 

5月もこのような相談が相次ぎました。やさしく声をかけてきた相手が、ある日を境に脅迫者に変わる――それが、いま広がっているセクストーション(性的脅迫)です。 

 

相談の多くは、X(旧Twitter)やInstagram、出会い系アプリ、LINE、ゲームアプリなどで知り合った相手からの被害。性的な写真や動画を送った後、「ばらまく」「家族や友人に見せる」と脅され、金銭やギフトコードの要求が始まります。金額は数千円〜数十万円。何度も支払いを求められ、精神的に追い詰められてしまうケースがほとんどです。 

 

特に多いのは10代・20代の若年層。中には、ゲーム中のチャットから性的な会話になり、映像を撮られて脅されるといったケースもありました。被害に遭った方の多くが、強い自己否定感にさいなまれています。 

 

セクストーション被害の大半がInstagramのビデオ通話とiPhoneの「iMessage」機能を使ったセクストーション被害です。なぜiPhoneのiMessageが狙われるのでしょうか?iMessageは、友だち承認やブロックのハードルが低く、加害者が一方的にメッセージを送りやすい環境です。


SMSのように電話番号さえわかれば送信可能であり、被害者が加害者Gmailアドレス宛に、iMessageを送ってしまうと、被害者の携帯電話番号が知られてしまう。相手の端末がiPhoneであれば既読通知もつく。LINEやInstagramのような「友だち申請・承認」プロセスがないため、加害者が即座にアプローチ可能など、加害者にとっては“敷居の低い攻撃手段”となっており、中学生・高校生や大学生を中心に被害が拡大しています。 

金銭セクストーションの例
金銭セクストーションの例

 

私たちは、最新のブロックの仕方、被害にあったときの対応方法をホームページ上で公開しています。 ホームページはこちらからご覧いただけます。


性的画像の削除要請の現場から 


今月も、SNSや動画投稿サイト上に流出・拡散された性的被害画像・映像の削除要請対応が続いています。特にネットオークションサイトで、中古AVが繰り返し再出品されている実態に対する対策について関係者間で協議を行いました。販売停止したAVがネットオークションサイトで再販されることで二次被害にあう相談者が後を絶ちません。また最近では、AV作品の性行為部分のみをカットし、YouTubeに「紹介動画」として投稿することでPV(再生回数)を稼ごうとするケースも確認されています。これらは、新たな性的搾取だと捉え、加害傾向がますます多様化・巧妙化していることがわかります。 

 

ぱっぷすでは、相談者からの依頼を受けて、Instagram、X(旧Twitter)、YouTube、 

FC2などに投稿された被害画像・映像の削除のサポートをしています。削除対応には、プラットフォームごとの手続きや英文でのやりとりが必要なこともあり、ご本人だけでは対応が難しいケースもあります。削除要請の過程では、本人確認や証拠の提出が必要になることがありますが、私たちは可能な限り相談者の負担を減らす工夫を重ねています。プロバイダに個人情報を出さずに対応できるケースもありますので、ご相談おまちしています。


生成系AIについてのディスカッションに参加

 

ぱっぷすはこれまで、児童ポルノ被害について、制度上や運用上の課題についても政策提言をしてきました。子どもや若者の性的な画像や動画は、削除要請だけでは追いつかないほどのスピードと量で流通しています。さらに、現在では「生成AI」という新たな技術が加わったことで、子どもの権利侵害が、より匿名性の高い形で拡散されてしまうリスクが急激に高まっています。


顔写真だけで、性的な画像・動画を誰もが容易に作れる時代になりました。ぱっぷすでは、生成系AIで生成されたポルノ被害の被害相談も寄せられ始めてきています。

JPNIC前で記念撮影
JPNIC前で記念撮影

こうした課題について、児童ポルノ禁止法に詳しい弁護士、国際的に活動する子どもの権利団体と一緒に、パネルディスカッションに参加しました。


現在の日本では、「創作文化の保護」という名目を理由に、関係する業界からの強い抵抗があり、AIで生成された児童ポルノに対する直接的な規制は未整備のままです。


現在の主流な見解では、実在する児童を元に生成された場合に限り、「名誉毀損罪」での対応が可能とされています。ところが、被害児童の画像が元になっていることを証明することは極めて困難です。わずかに描写方法を変えるだけで同定が不可能になり、児童ポルノ禁止法においても身体の部位の一致が求められるため、現行法での対応には大きな限界があります。


運用上、名誉毀損罪の適用には、個人情報とセットでの拡散が必要とされますが、生成AIによる被害では必ずしもそうした情報と一緒に拡散されるとは限らず、結果として加害行為が法的に処罰されないまま放置されてしまうリスクが高まっています。


こうした実態を踏まえ、ぱっぷすは実効性ある救済と規制の必要性を訴え続けています。

 

夜の路上アウトリーチ 


今月も、夜の街で出会った若者たちの姿を目に焼きつけながら、私たちは今日も声をかけ続けました。全体的に若年層の姿が多く、特に10代半ばの女性が目立ちました。受け取り率も高く、ぱっぷすのチラシや声かけに耳を傾けてくれる子が多い日でした。 

 

とあるホテル街では、顔見知りの女性と再会。「表情がいつもと違う」と気づいて声をかけると、「死にたい」「何かっていうより、生きてるのが疲れた」と小さくこぼしてくれました。こうした言葉を、ぱっぷすは聞き逃しません。連絡先を交換してサポートしていきます。


街頭での何気ない声かけの一つひとつが、若者との関係のはじまりになっています。「また会えたね」「今日は大丈夫?」と問いかけながら、必要なときには支援へとつなげられるよう、私たちはこのまちに立ち続けています。 

 

夜間のアウトリーチのようす
夜間のアウトリーチのようす

 

都内の繁華街にある「夜カフェ」 


ぱっぷすの夜カフェ「ひつじカフェ」では、若年層の深刻な孤立や不安が浮き彫りとなる出来事がありました。特に印象的だったのは、18歳未満の少女が妊娠の不安を抱えてカフェを訪れたケースです。


「自宅には決して戻らない」という覚悟で家を出てきたという彼女。一緒に来た友人に背中を押され、夜カフェに足を運びましたが、スタッフともなかなか言葉を交わせず、ただ隣に座っていたスタッフの「苦しかったね」「しんどかったね」という言葉に、静かに涙があふれました。


特に、親から捜索願が出されている未成年の場合、スタッフとしてできることが非常に限られてしまいますが、だからこそ、逃げざるを得なかった背景や、今の困りごとを丁寧に聞き取り、本人の意思や状態を“代弁”して、子ども支援に繋げていくことが大切です。 

 

一方で、支援につながった若者の中には、安心できる場所で少しずつ関係を築き直している様子も見られました。久しぶりに夜カフェに来た若い女性は、自分の意見を我慢してしまう傾向があったそうですが、「最近は自分の意思を伝えられるようになった」と話してくれました。彼女自身が変化したことで、関わる人も徐々に変わってきたという言葉に、スタッフも喜びを分かち合いました。 

 

私たちの居場所支援は、ただ“答え”を提供する場ではなく、一人ひとりのペースに寄り添い、「ここなら話せるかもしれない」と思ってもらえるような関係性を築くことから始まります。表に出てこない苦しみの声に耳を澄まし、できる限りのことを重ねていく。そんな日々の中に、小さく確かな変化が生まれています。 

 

夜カフェに届いた寄付物資
夜カフェに届いた寄付物資

ホストクラブ商法の規制強化


恋愛感情を利用して女性客に高額な飲食代を請求する、いわゆる「ホストクラブ商法」への規制が大きく前進しました。2025年5月20日、衆議院本会議にて改正風営法が可決・成立しました。

風営法改正直前の衆議院本会議の様子
風営法改正直前の衆議院本会議の様子

今回の改正で、以下のような悪質な行為が禁止されます。

  • 色恋営業による高額請求や、売掛金の不当な取り立て

  • 支払いのために女性に売春や風俗での就労を強要する行為

  • ホスト側からの紹介に報酬を払う「スカウトバック」


さらに、無許可で営業した店舗に対する罰金の上限も200万円から3億円に引き上げられ、一連のビジネスモデルに対し国として厳しい姿勢を示すことができました。


ぱっぷすでは、2023年6月から、ぱっぷすの夜カフェで見えてきた、若年女性の性を食い物にしてきたビジネス(コンカフェ・ホストクラブ商法、買春の勧誘)への規制強化を訴えてきました。他団体と連携しながら、多くのメディアや・都議会議員・国会議員のみなさまのご尽力、関係省庁の迅速な働きにより、成立することができました。心からお礼申し上げます。


これまで放置されてきたホストクラブ商法の被害に対して、大きく一歩を踏み込んだ対応が始まります。ぱっぷすでは、相談支援を通じてこの制度を活用していきたいと考えています。



ご支援を通じて、性的搾取に巻き込まれた人々に回復をもたらします。皆さまのご⽀援が、性的搾取の問題を解決する⼤きな⼒となっています。


  • ぱっぷすの居場所、夜カフェの様子
    毎月1000円で (1日33円)年間で1日居場所がない女性に対して安心・安全な宿泊支援ができます。
    ぱっぷすの相談支援・オンラインアウトリーチの様子
    毎月3000円で年間で1日デジタル性暴力被害者の相談支援窓口が維持できます。
  • ぱっぷすの宿泊施設ひつじハウス
    毎月500円で年間1回繁華街での夜回り(アウトリーチ活動)で出会った若い女性に同行支援ができます。

 

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