文:ぱっぷすスタッフA
ぱっぷすでは毎週、ネオン煌めく夜の東京都内の夜の繁華街に繰り出し、若年女性等を対象とした夜回り活動(アウトリーチ)に取り組んでいます。その中で、寒空の下でも路上に立ちながら生活の営みを成り立たせている女性たちにも出会います。彼女たちから「今日はネカフェに泊まるよ」ときくと、個人的には「ネットカフェに泊まれるくらいのお金が今日はあるのだなぁ…よかったぁ」と少しほっとします。
しかし、よく考えてみると本当にそれは「良いこと」なのかしら、と頭の隅で疑問が浮かびます。私がこれまで利用したことのあるネカフェは「健康で文化的な最低限度の生活」を営むことは到底出来ないだろうな、という所ばかりだったからです。そこで、夜1時半ごろ都内の夜の繁華街で有名な某ネカフェに入店し「夜の街のネカフェ」を体験してみました。
受付では身分証の提示や煩雑な会員登録の手間は一切なく、部屋のタイプについてはリクライニングマットとリクライニングチェアを選べましたが、値段は同じだったので今回は前者にしてみました。3時間コースで1200円ほどの支払い金額でした。部屋に入るとリクライニングマットとパソコンが中心に鎮座しており、壁側にはハンガー、ティッシュ、ビニール袋、クッションなどがコンパクトに設置してあります。床にはキャリーバックを置けるくらいのスペースがあり、鍵をかけて外出することも可能なため大きな荷物がある人には便利そうです。
館内の設備についてはシャワールームや大浴場は無料で利用可能で漫画コーナーに併設された食事処ではカレーと卵かけご飯が無料で提供されていました。
眠る際は、受付で無料貸出されていたブランケットを被り、クッションを枕代わりにします。実際に横たわってみると、他のお客さんが出入りする音や廊下にある自販機から缶ジュースがガタンッと響く音などで何度も目が覚めました。狭い空間では足も充分に延ばせず、寝返りもうちづらく、体を休めるという意味では快適とは言い難い環境でした。
ただ、このネカフェは完全個室を謳っているだけあり、下手なシェアハウスよりもプライバシーを保つことができているし、煩わしい人間関係もなく、ある種の快適さは感じました。
夜の繁華街でアウトリーチをしていると「スマホは持ってるけど電話できない」「wifiがなきゃLINEもできない」という話をよく耳にします。そのため、ネカフェのwifiについては、歌舞伎町で路上に立つ人たちにとっては「泊まる」ことと同等以上のライフラインなのかもしれないと感じました。
以上が繁華街でのネカフェ体験ですが、最後に「ネカフェ宿泊後」に私が路上で体験したことを付記したいと思います。
早朝4時半、ネカフェ宿泊を終えて店を出た瞬間、出入り口にたむろしていた男性の1人が後ろを付いて来ました。外見は20代前半、黒で統一された服装で「ねえ、ちょっと待って~」とフレンドリーな口調で何度も私の歩行を止めようとしました。しかし効果がないと分かると突然地面にしゃがみこみ「多数のサンリオグッズが詰められた鞄」を笑顔で私に見せてきました。彼にとっては多数のシナモロールが対女性秘密兵器だったのかもしれませんが、私の足が交番方向に向かうと、やっと諦めてネカフェの方へ去っていきました。
このような男性がおそらく何度もネカフェ前で女性に声をかけていたのだろうと想像すると、その労力のかけ方に驚かされます。同時に「夜の繁華街で、ひとりでネカフェに泊まる女性」という存在は、男性側からの(いわば)アウトリーチに遭遇しやすい面があるのだと肌で知ることができた出来事でした。
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