メルマガvol.127【書籍紹介】声を聞いた者の責任として世に伝えたい『AV出演を強要された彼女たち』(2016)
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メルマガvol.127【書籍紹介】声を聞いた者の責任として世に伝えたい『AV出演を強要された彼女たち』(2016)



ぱっぷすの活動は2009年に始まり、これまでにぱっぷすの活動をベースにした単行本が3冊※出版されています。このところTwitterをはじめとするSNSでぱっぷすの本の紹介がされ、拡散されているようです。有難いことです。改めて、3冊の本について出版の裏事情などを含めてメルマガで順次ご紹介いたします。


図書紹介その1


この本は、AV(アダルトビデオ)出演被害の被害者の実情、業者に取り込まれていく経緯、取り交される契約書などに焦点を当てた、日本で初めての本です。


ぱっぷすは「AVに出演したことによって甚大な性暴力被害を受けている被害者がいる」「訴える窓口が必要だ」との思いで、2013年にAV被害を中心として性暴力被害の相談窓口を開設しました。この本を出版した2016年には相談者総数は300人を超えました。その内、AVに関わったことによって、取り返しの付かないような被害を受けた方たちの相談は200人超となりました。


それまでは「AVは大人のファンタジー、被害があるように見えるが映像はファンタジーだ」と言われていました。しかし、相談窓口を設置したことによって「私はこんなに苦しんでいる」と訴える方たちが女性を中心に、男性も含めて、やっと姿を現したのでした。


相談対応をしたぱっぷすのスタッフたちは、初めて聴く被害者の被害のすさまじさに息を呑む思いがしました。無理やり契約させられたけれども、AVにはやはり出演したくないと事務所に断りに行った。そこで性交を強いられて、撮影されて、AVの世界に引きずりこまれた。ほとんど信じ難い話ですが、こうした訴えが現実にありました。この実情を世に知らせなければならないと考えたのです。


男性向けのAVの視聴については、男性の中で観たことがないという人は稀でしょう。しかし、女性の大部分は実際に買って観たことのない人がほとんどでしょう。男女間での情報の非対称大きな偏りがあるジャンルのひとつです。一般的なAVの持つ暴力性、性差別性についてほとんどの女性は知らない、でも、ほとんどの男性は見ているけれどもそこに女性に対する暴力、差別があるという認識はありません。伝手を辿り、出版社と編集者に巡り合い、この本の出版の運びとなりました。


この本の著者で、ぱっぷすではスーパーバイザーを長く勤めていた宮本節子さんは「世の中の人々が知りたいであろうことを伝える本にしようと執筆しました。なので、200人余のAV出演被害者の相談に係わったぱっぷすのスタッフたちの見たこと、聞いたこと、考えたことなどの情報が満載です。」と言います。


第1章「アダルトビデオに出演させられてしまった彼女たち」では、典型例と思われる5事例を個人が特定されないように同様の被害を一般化して掲載しており、いずれの事例も衝撃の事例です。“AV女優”のルポルタージュはなん冊か既存がありますが、この本は業者との関係、被害の実態に焦点を当てています。


第2章「なぜ契約書にサインをし、なぜそこから抜け出せないのか」では、AV事業者はどのような手口で被写体を攻略しているのかなどを詳述しました。そして、そもそも出演者をとことん縛る“契約書”には何が記載されていて、何が記載されていないか。ホンモノの契約書を元に分析しました。


ぱっぷすのスタッフが直接聞き取りを行った女性たちの声を中心に、2016年時点のアダルトビデオの制作・流通の過程でおきていることを伝える、稀有な書籍です。著者の宮本さんは「執筆には3カ月かかり、その間に10キロ近く痩せていまだに元には戻っていない」と言います。AV出演被害の問題を理解するために、ぜひお手に取ってみてください。



【目次】

1 アダルトビデオに出演させられてしまった彼女たち

 1-1.Aさん*それでも彼女は言い張った。「親には知られたくない」  1-2.Bさん*未明のメール。「AVに出演させられそう。助けてください」  1-3.Cさん*「家の外になんだか変な男たちがいる」。真夜中の支援活劇  1-4.Dさん*渡された一日の撮影スケジュール表。「いまさらバラせない」  1-5.Eさん*「あなたは特別」「だからがんばれ」と言われその気になった  1-6.アダルトビデオの世界に引き込まれていく共通のプロセス)


2なぜ契約書にサインをし、なぜそこから抜け出せないのか

 2-1.なぜ契約書にサインをし、なぜそこから抜け出せないのか  2-2.どのように支援をするのか  2-3.アダルトビデオ産業の構造―スカウトからDVD発売、動画配信まで)

補遺 契約書には何が書いてあって、何が書いていないのか

おわりに


【著者】宮本節子(みやもと せつこ) 1943年生まれ。日本社会事業大学卒業後、地方公務員福祉上級職を16年勤め、89年から全国社会福祉協議会社会福祉研修センター専任教員、95年から2004年まで日本社会事業大学付属日本社会事業学校専任教員としてソーシャルワーカー育成に携わる。現在、「ポルノ被害と性暴力を考える会」世話人として、女性や子どもに対するポルノ被害や性暴力を訴える社会活動に取り組んでいる。著書に、『地域に拓かれた施設づくり』(全国社会福祉協議会)、『証言・現代の性暴力とポルノ被害』(東京都社会福祉協議会、共著)、『フェミニズムと社会福祉政策』(ミネルヴァ書房、共著)など。


※NPO法人ぱっぷす(ポルノ被害と性暴力を考える会)の活動に関連する本は以下の3冊をはじめ、HPでも紹介しています。ポルノ被害や性的搾取の問題を考えるうえで重要な書籍リストになっていますので、良かったらご覧ください。https://www.paps.jp/goods


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