2018年03月31日発行 (No57)
2018年3月9日の衆議院内閣委員会において自民党の杉田水脈党議院議員は、アダルトビデオの出演している女性に対する中傷誹謗するのみならず、支援団体であるポルノ被害と性暴力を考える会やヒューマンライツナウを名指して根拠のない攻撃的な趣旨の質問を展開いたしました。対して、野田聖子総務大臣は極めてまっとうで本質を突いた回答をしておりましたが、水田議員の質問は放置できないと考え、抗議文を送付いたしました。
なお、杉田議員の発言に関する動画を張り付けましたので、是非、この動画をご覧になった上で、私たちの抗議文をお読みください。
1 内閣委員会 委員長 山際大志郎 殿 2 自由民主党 総裁 安倍晋三 殿 3 自由民主党 清和政策研究会(水田議員の所属会派)会長 細田博之 殿 4 衆議院議員 水田水脈 殿
2018年03月29日
内閣委員会における杉田水脈議員の発言に対する抗議文
特定非営利活動法人
ポルノ被害と性暴力を考える会
理事長 田口道子
〒113-0023東京都文京区向丘2-27-6-2F
ポルノ被害と性暴力を考える会(PAPS)では、リベンジポルノ・性的盗撮・児童ポルノの被害相談とその支援、アダルトビデオ業界・性風俗産業などにおける被害相談とその支援、これらの相談支援を通じて「ポルノ被害」や「デジタル性暴力」など、まだ可視化されていない新しい形の性暴力の問題などについて取り組んでいる団体です。
2018年3月9日衆議院内閣委員会において、杉田水脈議員は、事実を歪曲し捏造する質問を行いました。杉田水脈議員の不適格な質問内容について厳重に抗議をし、訂正を求めます。
1、杉田水脈議員発言 「幾つかのそういうのに出演していた女性が、借金を返すために出演していた女性が、実際に、アダルトビデオをやめた後につき合い出した男性にそれがばれてしまって、とっさについたうそが、強要されてやったということで、それで相談に行ったのがヒューマンライツ・ナウだったというような」について
PAPSには、既に289件(2012年から2017年11月までの総数)のAVに関わることによって、非常に困難な状況に陥った女性たちの相談が寄せられています。杉田水脈議員は、女性が自分の不利な状況をごまかすために、嘘を言っていると主張していますが、私たちが時間をかけて詳細に聞き取りをした結果では、自分の状況をごまかすためにその場しのぎの嘘を言いとおす女性はおりませんでした。したがって、杉田水脈議員の発言は被害女性に対する侮蔑であり、実際の深刻な被害を隠蔽するものであります。
なお、2018年3月にAVプロダクションの社長が逮捕された事案がありました。報道発表によれば、住吉会系暴力団員が運営していたとのことです。PAPSには、このAVプロダクションから一般的なグラビアモデルと称し、騙されてAV出演させられた被害相談は複数寄せられています。これらの女性たちは全員、業界最大手と称するAVメーカーにも斡旋させられていました。現在、PAPSは捜査協力を行い被害救済に尽力をしています。AV業界と反社会勢力との関係については現在捜査当局において解明中であります。
2、杉田水脈議員発言 「この職業につきたいという女性はすごく多いんですよ、引く手あまたで。すごく狭き門なんだそうです。だから、わざわざ嫌がる女の子を無理やり出して、そんなことをすると、必ずその業者は潰れるわけで、やっているようなところはすごく小さいので、それよりは、というようなところの事例の方がすごくたくさんあるんですね。」について
杉田水脈議員の発言内容は、私たちが聞く被害女性たちの訴えることそのままです。被害女性たちは、杉田水脈議員の主張のような論理をAV業者から長時間聞かされて、自分たちは選ばれた人間なのだと思い込まされます。また、被害女性たちは途中でおかしいと感じても、交渉力の格差、情報の質と量の格差に付け込まれ、断れない状況に追い込まれます。
多くのAV出演被害女性は訴えたくても訴えられません。事実、アダルトビデオが発展したのは、1990年代ですが、被害者が名乗り出たのは2010年代に入ってからのことです。「嫌がる女の子を無理やり出して、そんなことをすると、必ずその業者は潰れる」とのことですが、潰れる業者はあるかもしれませんが、AV出演被害に関して有効な法律がないことから業者には潰れる理由がありません。潰れたように見せかけることがあっても、事業者名や代表者名を変えて再開しています。
また、2016年以降に労働者派遣法等で逮捕された複数のAVプロダクションはいわゆる業界大手と言われていた所でした。よって「やっているようなところはすごく小さいので」という発言は事実と異なります。
PAPSに寄せられた被害相談では、「パーツモデル、撮影会モデル、高収入バイト」など、事実誤認させる内容に基づきプロダクションに応募し、結果上記に述べた理由によりAVに出演を余儀なくされます。
わが国にはAV出演被害について被害救済できる有効な法律が無いことから、労働者派遣法などの法律を適応するしかありません。それでも刑事事件化できたケースもありますが、刑事事件の公判傍聴は誰でもが参加できることから、被害日時、販売日時などにより、映像の出演者はすぐに特定され、インターネット上で拡散されてしまう問題があります。
被害者の多くは、自身の肖像の映像が拡散し面白おかしく見世物にされることを恐れ、本来あるべき刑罰より低い刑罰(略式命令や罰金刑)、場合によっては不起訴という形で、泣き寝入りを余儀なくされます。かつ、拡散した自己の肖像に対し、有効な被害回復手段はありません。
3、杉田水脈議員発言 「AV女優という性奴隷が今現在の日本にもいる」について
AV出演強要などの性的搾取・強制労働などの人身取引は、Modern Slavery(現代版の奴隷制)といいます。現代版の奴隷制はどの国にも存在し、米国・EU等ではこの問題の解決に真剣に取り組んでいます。一方で、杉田水脈議員はこれらを含めて「反日のプロパガンダ」と主張しています。
しかし、この主張自体が国際的な取り組みに相反し、今なおわが国は性的搾取に寛容な国として扱われ、海外からは「ロリコン大国」「ポルノ大国」と言われ、わが国の国際的地位や名誉を貶めることに繋がっています。
以上
Comments