2025年6月の活動報告
- Admin
- 7月12日
- 読了時間: 7分
更新日:7月13日

こんにちは、ぱっぷすです。今月もぱっぷすの相談支援現場の動きと課題をお届けします。各地で猛暑が続いておりますが、皆さまどうかご自愛してください。
驚異的な新規相談件数の増加
今月は新規相談が398人と多く、そのうち児童の相談はわかっているだけ81件でした。相談者数の増加に伴い、対応スタッフの負担も増え、支援体制の強化が急務ですが、なかなかそこまで手が回ってない現状があります。

その中でも注目されたのは、生成AIによるディープフェイク動画被害に関する相談。わずか1週間の間に2件もの事例が寄せられ、被害の深刻化と低年齢化を肌で感じています。
これらの被害は「性的画像・映像の拡散」だけでなく、被害者の自尊心、学業、交友関係にまで深く影響しており、即時対応と長期的なサポートの両輪が求められています。
緊急対応の繰り返しだけでなく、加害を生まない社会をどう構築するか、これは、支援の現場からの重要な問いかけです。
「暗黒の夏休み」対策

1.セクストーション被害の深刻化と緊急会見
セクストーションとは「性的な画像や動画をもとに、金銭を脅し取る行為(性的恐喝)」の意味で、金銭+「Sex(性的)」+「Extortion(恐喝)」を組み合わせた言葉です。米国では2022年以降、この被害によって10代の少年が命を落とす深刻な事件が相次いだことから、米国議会で公聴会が開かれ、政府やプラットフォームによる対策が進められました。昨年からは「対策の強化により狙えなくなった米国の子どもたち」の代わりに十分な制度的防御が整っていない日本の子どもたちが、国境を越えた犯罪グループの標的となっています。ぱっぷすへセクストーション被害相談は、前々年度648人→前年度は1863人→今年度は既に907人と急増しています。夏休みを前に、金銭的なセクストーション(性的脅迫)の被害が若年層に広がっていることを踏まえ、緊急院内集会を7月17に行います。

一般申し込みはこちらから https://qr.paps.jp/6wGrp 参加申し込みができます。
2.性的画像送信を強いられるグルーミング事案
今月は、SNSを通じて女子児童が性加害に巻き込まれる深刻な「グルーミング」被害も多く寄せられました。グルーミングとは、子どもに優しく接しながら信頼を得て、その心理的な隙間に入り込み、信頼関係を装って相手をコントロールする行為です。
最近、SNSを通じて少女たちが性被害に巻き込まれる「グルーミング被害」が後を絶ちません。ぱっぷすは、2021年夏にNHKと協力して、グルーミング加害実態調査しましたが、そのほとんどが、性的な目的での接触であり、多くは実際に会って性行為をしたいという趣旨でした。
加害者は、いきなり性加害をしてくるわけではありません。むしろ最初は「優しい言葉」「共感」「好意」を示しながら「趣味が一緒だね」「悩みがあるなら聞くよ」と寄り添ってきます。「君は特別だよ」と特別扱いもしてきます。こうした言葉で、加害者は被害者に安心感を与え、「この人だけは私をわかってくれる」と、じわじわと信頼を得て、孤立感を利用し、支配していきます。「これは2人だけの秘密だよ」「親には言えないことも僕には言えるでしょ?」といった言葉で秘密を共有させ、親以上に信頼できる存在のようにふるまいます。
そして、気づいたときには「断れない関係」になり、性的な写真を要求されても断れなくなります。つまり、「頼れる人」から「言うことを聞かなきゃいけない人」へと変わっていくのがグルーミングの怖さです。

その後は、児童ポルノ禁止法製造のほう助や刑法の「性的画像の送信要求罪」に明確に該当する極めて悪質な行為が行われます。ぱっぷすでは、SNS事業者と連携しながら、被害実態の把握と刑事事件化が勧められやすくなるための環境整備を進めています。
3.路上買春の勧誘“見過ごされてきた性的搾取”
ぱっぷすには、10代20代の女性を中心に「路上での買春」に関する被害相談が寄せられています。そこで性暴力被害を受け、所轄署と連携して、刑事事件化を目指しているケースもあります。街を歩いているだけで突然声をかけられる。「お金をあげるから、やらせてよ」「泊まる場所がないなら一緒に来ないか」そうした言葉は、彼女たちの心身を深く傷つけます。
さらに、近年私たちが強い危機感を抱いているのが、訪日外国人観光客による10代20代の日本人女性へのセックス・ツーリズム(買春観光)です。ぱっぷすのスタッフも、路上で「ヘイベイビー・ハウマッチ」と聞かれ、歩いているだけでセクハラを受けました。残念ながら、日本では、児童買春は処罰の対象ですが、買春の勧誘「きみ、いくら?」と声をかけることに処罰規定はないため、声をかけ放題となっています。
多くのその「声かけ」が“人身取引の入り口”となっている現実を彼らの「勧誘」が10代20代の女性たちの自己決定権や安心して歩く自由を奪っていることを、私たちは知っています。
また、外国人側が一時的にしか日本に滞在しない場合、追跡・捜査の難しさもあり、被害女性の声が届かないまま泣き寝入りさせられている現実があります。
買春観光と10代20代の女性を取り巻く「消費」構造
2016年頃から、性風俗産業界隈では、2020年の東京オリンピックに向けて、外国人観光客への“おもてなし”を掲げたインバウンド対応が進みました。具体的には、英語を含む多言語対応の風俗店紹介ページや予約サイトが増加し、日本での性体験を「観光資源」の一つとして売り出す動きが加速しました。
しかし、新型コロナウイルスの世界的流行によりインバウンド施策は完全に停止しました。ところが2023年の水際対策緩和と観光客の急増を機に、この流れが再び強まり、以前にも増して外国人男性による買春が常態化してきています。特に買春客により“消費”される光景は、もはや個人の被害の枠を超え、構造的な人権侵害のレベルに達しています。
それらを支えるインフラ(SNS、紹介業者、翻訳付き風俗サイトなど)について、より厳密な規制と実態把握が求められます。特に「消費される側」として立たされている10代20代の女性たちの声が、政治にも制度にも反映されていないことは深刻です。
今後、ぱっぷすとしては、路上での買春勧誘の実態調査や、外国人観光客による性搾取を助長する社会構造への批判と提言を、国内外の関係機関とも連携しながら強めていきます。
街中の撮影者と「見せ物化」される10代20代の女性たち

近年、街頭や繁華街での「盗撮」や、本人の同意を得ずに動画や写真を撮影され、それがSNSやYouTube等に投稿される被害の相談が増加しています。特に深刻なのは、生活困窮などの理由でやむなく路上に立つ女性たちが、「珍しい光景」や「過激コンテンツ」として勝手に撮影され、晒されてしまうケースです。
とりわけ、YouTubeを通じて再生回数を稼ぐ目的で、「路上で声をかけてみた」「◯◯にインタビュー」などと題して女性を映す動画が散見されます。これは、女性の尊厳を踏みにじり、性的搾取や性差別を助長する構造が、映像コンテンツという形で拡大再生産されています。
ぱっぷすでは「YouTube路上撮影被害者の会(仮)」の立ち上げを検討しています。これは、被害者の声を集めることで、被害の可視化・共有をしていきます。盗撮や予期せぬ撮影を公開するのは、単なるプライバシー侵害ではありません。それが当事者の「生きていく場所」をさらに脅かし、必要なサポートを遠ざける障壁にもなっています。
今後、ぱっぷすでは被害者の声の集約を呼びかけていきます。もし、身近な方で類似のケースがあれば、ぜひ情報をお寄せください。
ご支援を通じて、性的搾取に巻き込まれた人々に回復をもたらします。皆さまのご⽀援が、性的搾取の問題を解決する⼤きな⼒となっています。
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