ぱっぷすでは、生きていくことに困難を抱えた若年女性に対し「社会や「昼」に居場所があり、伴走者がいる」ことを伝えていく必要があると考えて、これまで活動を続けてきました。このたび東京都から「東京都若年被害女性等支援事業」してアウトリーチに関して委託を受けることができました。
ぱっぷすでは、10代~20代の若年層の方が性的搾取やデジタル性暴力の問題に直面したときに、これは相談してもいいことなのか不安や悩みをかかえてしまう多くの方の声を聞いてきました。困難な状況にあるほど方ほど、加害者に気づかれずにSOSを出せなくなります。どのようにすればこのハードルを下げることができるか試行錯誤の連続でした。
福祉の分野のアウトリーチとは「援助が必要であるにもかかわらず自発的にサービスを求めようとしない方たちへサービスの必要性を伝え訪問支援を行う」ことです。ぱっぷすの考える“アウトリーチ”では、「誰かに話してもいいことなんだ」「相談してもいいことなんだ」と思えるように、ぱっぷすの側から若年層の方に声をかけていきます。
具体的には、性的搾取やデジタル性暴力に遭いやすい10歳代~20歳代を中心に行います。東京都内の新宿歌舞伎町や渋谷・表参道などの繁華街で声をかけてチラシやパンフレットを配ったりする啓発活動、インターネットを使った情報発信や声かけなどさまざまです。
これまでの私の価値観では、アウトリーチスタッフとして関わるまでは、そもそも彼女たちは困ってはいないのではないかと、支援を必要としないのに相談支援団体から声をかけられて、耳を傾けてくれる方はいるのか疑問に感じていました。
アウトリーチ活動を始めてパンフレット等の配布物の作成など試行錯誤を重ねながら2か月を過ぎようとしております。
実際に天候問わず夜間に現地に赴ているスタッフは、若年女性の人数に加え、それ以上に彼女たちに性的搾取をしようとするスカウトの数が多いことにとても驚きました。さらにびっくりしたことに買春目的の男性が、入れ替わり女性に声をかけています。
雨天が続き、久しぶりの晴れた日のアウトリーチ活動にて、公園の一角で5~6人の中年男性がしゃがんでいる女性を取り囲み、話をする順番を待っている情景は買春の交渉をしているように見えました。この場面を目の当たりにして、率直にその男性に嫌悪感を抱いたことと、彼女が今の環境を変えたいと思ったときにすぐに手を差し伸べることができるようと心に刻みました。
法律では売春すること、売春の相手方になること(買春)を禁止していますが、買春者に罰則規定はありません。
逮捕などの刑事処分をされないことは問題なのです。
ぱっぷすスタッフが週に2回、約5~6人で路上アウトリーチをしてもスカウトの数に到底かないません。
さらに、スタッフがアウトリーチをした後、スカウトやホストに連れて行かれる事も多々あります。繁華街では完全に福祉の力が性的搾取をする事業者に負けていることを痛感します。
アウトリーチで声掛けをする方たちにとって、魅力的に写っているキラキラした世界に対抗するには、福祉の力も魅力的に写らなければなりません。
そのためには、こちらも若年女性にアプローチした広報戦略が必須となるのです。
繁華街に集まる方たちへ、アウトリーチをすると様々な反応が返ってきます。
アウトリーチに対して一切無視を突き通す方、「興味がない、いらない」ときっぱりと断ることができる方は、スカウト被害に遭う心配のない方と考えます。
意思決定力と意思表示が明確である態度は、スカウトの勧誘にも同じ力を発揮するのではないでしょうか。
逆にわざわざイヤホンを外して立ち止まり、話をよく聞いてくれる方や、会話に応じてくれる方こそ心配がある要素を持ち合わせていると考えます。
「女性だから話に応じた」「女性と話すのは久しぶり」と言う方もいらっしゃいます。
彼女たちには何か生きづらさがあり、繋がりを求めているように感じました。
将来的にはスカウトなど性的搾取をする側にもアウトリーチを行っていきます。路上でのスカウト行為が犯罪であること、スカウトを廃業させ性的搾取に加担しないで生活できる道を模索していきたいと思っています。
現在は種まきの段階でありますが、居場所がない、性産業を辞めたいけれど辞められない方たちとアウトリーチを通じておたがいの信頼関係を構築し、相談することへのハードルを下げ、若年層の方たちが性的搾取やデジタル性暴力に遭っても「相談しても良いことなんだ」と思える社会、そして性的搾取を寛容にさせない社会にしていきます。
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