セクストーションの被害とは?性的脅迫の実態、傾向、対応、法律について
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メルマガVol,131「セクストーションの被害とは?性的脅迫の実態、傾向、対応、法律について」



ぱっぷすの相談窓口には毎月100件近い相談が寄せられています。2023年1月は122件の相談が寄せられており、相談の内容はAV出演被害やリベンジポルノ被害、盗撮被害、SNS等での性的な画像・動画のやり取りによる困りごとなどさまざまです。


なかでも、急激に増えているのが「セクストーション」の被害相談です。ぱっぷすに寄せられる相談の4分の1を占めており、中学生や高校生からの相談が急増しています。女性だけでなく男性もかなりの数の被害にあっているようです。セクストーションの被害について、私たちが把握している実態を説明します。

セクストーション(性的脅迫)とは?

セクストーションとは「セックス(性的)」と「エクストーション(脅迫)」を合わせた合成語です。SNSやネット上で親しくなった相手が「裸の写真を送ってよ」「自慰行為の画像を交換しよう」などと持ちかけ、言葉巧みに誘導して、個人情報や性的画像・動画を手に入れます。


それから本性をだして「金をよこせ」「もっと激しい(性的な)画像を送れ」と要求し、「さもないとネットで晒すぞ」などと脅迫してきます。要求に応じたとしても、さらなる要求や脅迫を繰り返し、被害者を追い詰めるという犯罪行為です。


ぱっぷすに届いたセクストーションの被害の声

(個人を特定できないように複数の相談内容をもとに一般化しています)

「相手といい感じにやり取りしていて、ノリで顔付き自慰行為の動画を送った。少し経ってから『金を送らないとネットにばら撒くぞ』と脅された。どうすればいいか。」

「相手に嫌われたくなかった。言われるままに性的画像を送ってしまった。相手からは『顔つきで送れ』『もっと過激な映像を送れ』『さもないと晒すぞ』と脅されて困っている」

「ネットでいい感じになった相手に性的画像を送ったら『言うとおりにしないとばら撒くからな』と脅された。相手の名前を知らないし、どこの誰かは分からない。画像がどうなるか、不安です。」

「SNSで知り合った相手と、ちょっと、きわどいやり取りをしていて『今までのやり取りを晒されたくなかったら、性的画像を送れ』と言われ、怖くなって毎日のように送り続けた。こんなことを続けたくない。助けてほしい。」

「性的画像を送れば金を払うというので画像を送ったら、そのまま音信不通になった」

「性的画像を晒されたくなかったら10万円送れと言われた。そんな大金は払えない。どうすればいいのでしょうか。」

(※要求される金額は10万円とは限りません。「100万円を送れ」と吹っ掛けるような悪質な事例もありました。)

セクストーション被害相談の傾向

2022年夏ごろから、ぱっぷすにはセクストーションの被害相談が増えました。中学生や高校生などの未成年からの相談が多く寄せられており、女性だけでなく男性も、かなりの数の被害にあっているようです。


男子学生が被害にあうケースでは「やりとりをしている相手を女性だと思っていたら、あとから相手が男性だとわかって、画像や個人情報を質に脅されている」というパターンが散見されます。

ご本人と一緒に警察への被害相談を進めている事例もありますが、被害に遭われた方の中には「相手は海外の人だと思う。だから、警察に相談しても何もできないと思うし…」と、警察への被害を届け出ることをあきらめてしまう方もいます。

高齢の親世代が狙われてるオレオレ詐欺などの特殊詐欺は被害の未然予防・啓発などが進んでいますが、セクストーションは予防・啓発がまだ進んでいません。社会的な経験が少ない若年層がターゲットにされているようなので、被害の拡大が懸念されます。 


被害相談への対応


セクストーションの被害相談への対応の例として、以下のようなことを伝えています。

  • 証拠保全の必要性(ブロックしない、DMをスクショ記録に残す、その方法など)

  • 法的にはどうか(あなたを守る法律知識について)

  • 対応方法の提案(個別の事情や本人の意思を確認しています)

また、中学生や高校生からの相談の場合には、18歳未満の児童の性的な画像・動画は児童ポルノ禁止法に該当しますので、以下のことを伝えています。

  • 未成年のあなたは法律によって守られる立場だということ

  • 未成年の性的画像・動画を所持していると、相手が処罰の対象となること

こうした情報提供をしたうえで、警察への相談を案内することもあります。ただし、中学生や高校生の場合には「警察にはいきたくない、言いたくない」「学校や親に知られたくない」という想いの方も多いので、本人の意思を尊重する対応を心がけています。


セクストーションの被害が拡大した背景

よく聞くパターンのひとつが、交際相手から「撮っていい?」「(性的な自撮り写真を)送ってよ」と頼まれて断り切れずに応じてしまったという話です。

「最初は拒んだけど、しつこく言われて」

「断り続けているうちに私が悪いみたいに感じて、根負けして応じてしまった」

「けど、まさか、こんなことになるなんて…。」

このような相談が数多く寄せられています。性的な画像・動画を手に入れた側は、被写体の意思に関係なく視聴することができます。友人に見せたり、LINEでシェアしたり、デジタル化した画像は複製も簡単にできます。


一方、被写体になった側は撮られた写真・動画がどのように扱われるのかコントロールできません。被写体となるのは多くの場合は若年女性です。「あの写真はどうなったのか」「ネット上に拡散しているのではないか」という漠然とした不安を抱えることになり、そのことに深く傷つき、苦しんできた相談者の声を数多く聞いてきました。


私たちはデジタル性暴力やAV出演被害の"声"を聞き続けてきた団体です。セクストーションの被害が拡大する背景にあるのは、性的な写真・動画の撮影を求めることが、あまりにも普通のことになってしまっている現状があります。そのことに危機感を募らせています。

法的にはどうか?撮影罪の新設にむけて

2023年2月、刑法の性犯罪規定の見直しを検討する法制審議会(法相の諮問機関)の部会は「撮影罪」の新設を求める要綱案をまとめました。撮影罪の新設は、私たちの団体も参加する刑法改正市民プロジェクトが性的動画・画像の撮影や拡散被害を無くすために要望してきたことです。



撮影罪が取り締まるのは撮影行為だけでなく、拡散することや保管行為、これまで課題とされてきた没収・消去の方法まで網羅した内容です。セクストーションの被害を拡大させないためにも、被害者の立場に立った法改正が必要です。

私たちのもとに寄せられる被害相談は氷山の一角だと考えます。

このような犯罪の手口は巧妙化・複雑化しています。解決するには専門家や専門機関の協力が必要です。被害にあった方はひとりで抱えずに相談してください。そして、このような犯罪を許さず、被害者を救済し、加害者を取り締まっていく必要性を広く周知していただきますようお願いします。 




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