メルマガVol,133「AV出演被害の相談から見える実態、影響、課題」(AV法から1年:後編)
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メルマガVol,133「AV出演被害の相談から見える実態、影響、課題」(AV法から1年:後編)


AV出演被害を打ち明けて相談することは勇気のいることです。一人ひとりの苦しみを前に私たちには何ができるのか。AV出演被害防止・救済法は相談者の役に立っているのか、まだまだ足りていないのか。相談支援に対応するスタッフ達がQ&Aで答えます。 この記事の前半を読む 「AV出演被害の相談の特徴、変化、支援活動への妨害など」(AV法から1年:前編)」

Q : AV法は守られていると感じますか?

残念ながら、法律が守られていないことを複数の事例から確認しています。 特に個人撮影のケースでは事業者(撮影者)自身がこの法律のことを理解していないのか、軽視しているのか、違法な撮影・販売を行っていることを確認しています。また、私たちのもとに寄せられる相談の声からは、大手メーカーであっても法律に則っていない場合があることも確認しています。

AV出演を誘われた方、出演契約をした方に知ってほしいこと

  • 約束(契約)をする場合には、どのような約束(契約)かを説明した文書を渡さなければいけません。

  • 約束(契約)を説明する文書をもらった日から1か月は撮影をしてはいけません。

  • どのようなアダルトビデオが売られたりインターネットに流されるのかを前もって確認することができます。

  • 撮影してから4か月はアダルトビデオを売ったりインターネットに流したりしてはいけません。

  • アダルトビデオに出た人が約束(契約)をなかったことにしても、もらったお金以外のお金を払う必要がありません。

  • 約束(契約)をなかったことにした場合や約束(契約)に従わずにアダルトビデオが公表された場合には、アダルトビデオが売られたりインターネットに流されるのを止めることができます。


Q : AV法の施行後の相談はありましたか?


AV法が施行されたのが2022年6月23日なので、法律によって義務付けられてる1か月・4か月ルールを守っている映像であれば2022年11月下旬から法律施行後の新しい映像が公開されていることになります。


AV法施行後の新しい映像については2023年1月ごろから相談が寄せられ始めています。

Q : AV法の課題について意見を聞かせてください

AV法の課題はおおきく2つあると認識しています。


ひとつは「忘れられる権利」の規定がないこと。

もうひとつは「対価を伴う性交の契約の無力化」について議論を積み残していることです。 性交(セックス)は買ってはいけない、契約で縛ってはいけないということをどうやって政策につなげていくのかが課題だと認識しています。現状のAVはセックスの本番行為がエンターテインメントとして流布され続けています。そのことが当たり前になっている社会に問題があると、今後も訴え続けていきたいと考えています。

相談員からメッセージ

AV出演被害について、どうか、ひとりで抱え込まないでください。


私たちは相談に対応するために様々なトレーニングを受けていますが、AV出演による被害は個人が対処できるレベルを超えているものです。会社(メーカーや事業者)を相手にして交渉を進めることは、ひとりで対処するのは圧倒的に不利になるでしょう。


ネット上で思いもよらない形で自分の性的な画像や動画が拡散させられている現状について、警察でもいいし、ぱっぷすのような専門の機関に相談してほしいなと思います。(スタッフA)

デジタルタトゥーに苦しむ相談者に対応してきました。


AV事業者は「身バレしないよ」などと言って撮影を迫るでしょうが、彼らはAVがデジタルタトゥーになることをよくわかっています。


相談者が語る言葉から見えてくるのは、お金がない若い女性を狙って、お金を使って支配しようとすることです。その手口は特殊詐欺に近いものです。騙しの手口によって「対価が伴えば性的同意を奪ってもいい」とされて、多くの若い女性・子ども・一部の男性が被害を受けてきました。


その人たちに「声をあげていいんだ」と伝えたいです。 (スタッフB)

2022年に施行したAV法について。

法律ができたことは大事なことですが、法律を使う人が育たなければ効果を発揮しません。


ぱっぷすはこれまで約800件のAV出演被害の相談に対応する中で知識を蓄え、スタッフも支援技術と対応力を向上させてきました。私たちの相談窓口には「いま、AVに出演させられそうになっている。どうしよう!!?」という差し迫った相談が寄せられることもあります。スタッフ自身が身の危険を感じるような事件もありました。


それでも、この仕事に危険を回避しながら果敢に取り組もうとするスタッフが何人も育っていること。スタッフを支える組織の力を蓄えてきたこと。これらがあってこそ、性暴力の問題に取り組み続けることができたのだと思います。 (スタッフC)


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