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2025年7月の活動報告

  • 執筆者の写真: Admin
    Admin
  • 5 日前
  • 読了時間: 9分
7月の夜間アウトリーチの様子 
7月の夜間アウトリーチの様子 

こんにちは、ぱっぷすです。夏本番の暑さが続いていますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか?7月は記者会見、外部連携など活動が目白押しでした。あまりにも多くの内容があり、そのハイライトをお届けします。


金銭セクストーション 院内集会を開催しました!

7月17日、衆議院会館内で「金銭セクストーション被害に関する緊急院内集会・記者会見」を開催しました。49人のメディアの方がお越しになり、最新の相談件数や事例、そして日本社会の課題と、これから必要な対策について詳しく共有しました。その後、多くのメディアが取材し記事にしていただきました。被害実態や課題や対応策について幅広く議論しました。

 

院内記者会見の様子
院内記者会見の様子

院内集会後には議員食堂での昼食会や懇親会を開催し、学生スタッフの送別会も兼ねた温かな交流の場となりました。今後も継続的な発信と制度改善を目指していきます。

今回、セクストーション被害に関するビッグデータ分析から、子どもたちの長期休暇の時期に被害相談が増える傾向を発見。啓発のタイミングで検討材料になりました。

 

お知らせ|都補助金審査通過と今後の計画


東京都の若年被害女性等支援事業の補助事業者として、支援事業を継続できることになりました。今年度は、これまでの取り組みをさらに発展させ、支援の質と範囲を高めていくことを目指しています。具体的には、性的被害を受けた若年女性への相談支援に加え、居場所づくりや専門機関との連携強化をしてきます。被害にあった方々が安心してつながり、必要な支援にアクセスできるよう、引き続き寄り添いながら取り組んでまいります。

 

現場からの声|相談対応・アウトリーチ・ハウスより

7月の新規相談人数は411人となり今年度最多でした。7月の相談には、セクストーション被害の相談が多く寄せられました。

新規相談人数(月計)
新規相談人数(月計)

特に、SNSアプリを通じて海外ユーザーと接点を持ち、日常会話をしていたところから急に性的画像の要求を受け、応じてしまった後金銭やさらなる画像を求められるケースが相次ぎました。 AV出演被害についての相談では、18歳になったばかりで契約の同意能力がまだ十分とは言えない状況のまま 出演するケースが目立ちました。『当時の交際相手との関係性の中で「映像を撮らせて」と頼まれ恋愛感情から断れなかったが、のちに商業配信された』『数年たってあの撮影は「AV出演強要」だったと気づき、現在もフラッシュバックで苦しんでいる』などの相談も複数寄せられました。性産業における退店の妨げ、恋愛感情関係を利用した搾取など、セクストーションと明確に区別しにくい被害など様々な性的搾取の相談が寄せられています。性産業との関わりから来る相談の多くは、契約・報酬・同意・暴力などが絡み合い、一般的な性暴力や詐欺とは一線を画す複雑さがありました。

 

アウトリーチ

ぱっぷすでは今月も、都内の繁華街を中心にアウトリーチ活動を行いました。7月は夜間も熱気と湿度が高いために、衛生面への配慮から冷感タオルも一緒に配布したところ、思った以上に多くの方が受け取ってくださり、「助かる〜」といった声をいただくこともありました。配布物をきっかけに立ち止まり、こちらが想像していた以上に踏み込んだ話をしてくださる方もいます。

 

 

夏は治安が悪化する都内の繁華街
夏は治安が悪化する都内の繁華街

ある日は大雨のため、街全体の人通りが少なく、活動範囲も限られました。足早に通り過ぎる人が多く、声をかけるのも一苦労。でも、そんな日だからこそ「ありがとう」の一言が心に残ります。晴れた日は一転してにぎやかで、観光客にまぎれて歩く若い女性たちの姿も多く見かけました。ある日は「ぱっぷすさんですよね?」と「今こんなことで困っていて…」「AV撮影の話が来ていて不安です」「断り方がわからない」という困りごとは、相談支援に繋げました。

 

「わかってるふり」はしない

アウトリーチでは「わかってくれようとしている人がいるだけで救われる」という声を聞くことがありました。相手の気持ちを完全に理解するのは難しい、ましてや、自分が経験したことのない痛みや生きづらさに「わかるよ」と言うのは、時に相手を遠ざけてしまうこともあります。でも、「全部はわからないけど、それでも知りたい」そんな姿勢でいてくれる人の存在が、どれほど心強いことでしょうか。

 

大切なのは、“わかるふり”ではなく、“知ろうとする姿勢”。「聞かせてくれてありがとう」と言える関係性。「あなたの感じたことを大切にしたい」と言える距離の取り方ではないかと思います。それだけで、誰かの世界が少し変わるのかもしれません。

 

性感染症予防リーフレットの作成


性感染症対策リーフレット(おぢ:買春者のことを指します)
性感染症対策リーフレット(おぢ:買春者のことを指します)

以前にも増して外国人男性による買春が常態化してきています。特に買春客により若年女性が“消費”される光景は、もはや個人の被害の枠を超え、構造的な人権侵害のレベルに達しています。 ぱっぷすでは現在、独自事業として、性的搾取や性暴力被害の観点を取り入れた性感染症予防リーフレットを作成しています。アウトリーチチームの意見も反映し、より実用的なツールに仕上げています。

 

ひつじハウス(見えにくい「生きづらさ」のかたち)

ひつじハウスで出会う若い女性たちは、一見すると明るく話したり、笑顔で過ごしたりしているように見えることがあります。でも、その奥には「帰る場所がない」「自分は愛されない」「誰にも必要とされていない」といった、深い孤独や絶望感が隠れていることが少なくありません。家に帰るとしんどい思いをする、親と会話が成り立たない、安心できる居場所がない。そんな状態で、どこにも行き先がなく、街をさまようようにしてここへたどり着いた人もいます。

 

「愛されたい」「必要とされたい」という気持ちは、誰にでもあるごく自然な感情です。けれど、それが“わかってくれるふりをする誰か”によって利用されてしまうことがあります。ホストや恋人のような関係を装った相手に、「もっと尽くせば愛される」と思わされ、気づいた時には搾取されていた、そんなケースも少なくありません。

 

ひつじカフェのチラシ
ひつじカフェのチラシ

自分のことを「普通じゃない」「人に迷惑をかけてばかり」と責め続けてきた彼女たち。助けを求めることさえ「自分にはその資格がない」と感じてしまうことがあります。そうして、ますます声が出せなくなっていくことも見えてきました。面談では「15分だけにして!」とイライラを見せたものの、話し始めると時間をかけて静かに対話することができました。「今日は髪を切った」「暑いから短くした」など、心を開いて伝えてくれるといった、ささやかな変化がみられました。ひつじハウスから支援に繋がるケースもありますが、そうではないケースもあります。こうした「生きづらさ」は、ずっと誰にも聞かれなかった声、小さな痛みのが無意識にそうさせているのかもしれません。

 

削除要請の現場より(治外法権とのたたかい)

2025年7月の1か月間で、122人、合計1,434件の削除要請を行いました。相談者1人あたり平均して10件以上の削除申請を必要としており、被害が複数のプラットフォーム・複数の拡散先に広がっている実態が浮き彫りになっています。

 

所在地別の削除要請件数(上位5か国)は、1位:アメリカ(644件)2位:カナダ(514件)3位:オランダ(62件)4位:日本(48件)5位:ロシア(41件)です。

 

削除対象の大半が海外サーバーに保存されているコンテンツであることから、日本国内での法的対応だけでは限界があることが分かります。なかでも問題が深刻なのは、「X」(旧Twitter)をはじめとする一部の海外大手プラットフォームが削除要請に応じないという実態です。削除申請の窓口が存在しても、事務的に却下されたり、何の返答もないまま放置されたりするケースも少なくありません。

被害者の中には、何度も自分で申請を試みても対応されず、私たちの支援を通じて初めて動きがあるという方もいます。しかしながら、これらの企業は日本の法律の下にあるわけではなく、事実上の“治外法権”のような状況となっているのが現状です。

 

AIを使った画像検索技術の向上

ぱっぷすでは、寄せられる相談が増える中で、スタッフの負担を減らし、効率的な削除要請に対応するため、AI技術を活用した独自のシステムを構築・運用しています。その中核を担うのが、顔認識に特化したディープラーニングモデル「FaceNet512」です。

 

FaceNet512は人の顔の特徴を512個の数字(512次元元の特徴ベクトル、最終的には128次元に圧縮します)に変換し、顔の構造的な情報を高精度に表現します。たとえば、「目の形」「顔の輪郭」「鼻や口の位置関係」といった情報を、123, 456, 789…のような数値の組み合わせとして記録することで、画像ごとに固有の“顔の指紋”のような情報を作り出します。

 


Facenet512のイメージ図
Facenet512のイメージ図

さらにこのシステムでは、「ファインチューニング」という手法を用いて、特定の人物に対する識別精度を高めています。これは、既存のAIモデルを個別の相談者に合わせて追加学習させることで、メイクや顔の向き、服装、背景などが異なっていても、同一人物である可能性を高い精度で見極めることができるようになります。

 

ネットやSNSでは、画像が加工されたり、モザイクがかけられたり、別の背景に合成されて再投稿されることがあります。そのような画像は、普通の検索や目視ではなかなか見つけることができません。でも、このAIを使えば、そうした変化があっても「これは本人かもしれない」と判断し、見つけることができます。

 

AIが見つけた画像の中から、ぱっぷすのスタッフが一つひとつ確認し、「これは本人の同意なく使われたものだ」と判断した場合は、SNSや投稿サイトの運営に対して削除を正式に要請します。

 

このAIシステムは24時間365日、SNSやアダルト動画投稿サイトなどを巡回し、相談者の画像が新たに投稿されていないかを常にチェックしています。最近では、想像以上に高い精度で画像を見つけ出せるようになってきており、スタッフの間でも驚きの声があがっています。

 

ぱっぷすではAIによる膨大な計算処理に対応するため、これまで民生用のGPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)を活用しながら、限られたリソースで運用を続けてきました。しかしながら、AI処理の需要が日々増加し、画像解析や被害拡散の検知などに要する演算処理が蓄積する中で、現行の設備では追いつかない状況が続いていました。この現状をSNS等で発信したところ、私たちの活動にご共感いただいた方々から、中古のGPUの購入のための資金をご寄付いただくことができました。皆さまからのご支援に、心より感謝申し上げます。おかげさまで、より迅速かつ精度の高い支援体制の整備が実現しつつあります。


今回ご寄付いただいたGPU(RTX3090)

 

日々アップロードされる大量の画像を自動で収集し、そこから抽出された顔画像は600万件を超えました。特定の人物を高速に検索するため、ベクトルインデックス付きのデータベースを導入していますが、登録済みのデータ件数が増えるとメモリ消費が大きくなるという特性があるため、データ件数が増えれば増えるほど登録処理に時間がかかるという新たな課題も出てきています。


ご支援を通じて、性的搾取に巻き込まれた人々に回復をもたらします。皆さまのご⽀援が、性的搾取の問題を解決する⼤きな⼒となっています。


  • ぱっぷすの居場所、夜カフェの様子
    毎月1000円で (1日33円)年間で1日居場所がない女性に対して安心・安全な宿泊支援ができます。
    ぱっぷすの相談支援・オンラインアウトリーチの様子
    毎月3000円で年間で1日デジタル性暴力被害者の相談支援窓口が維持できます。
  • ぱっぷすの宿泊施設ひつじハウス
    毎月500円で年間1回繁華街での夜回り(アウトリーチ活動)で出会った若い女性に同行支援ができます。

 

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